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DBさん
DB
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江戸の不思議な百物語
去年の夏にやはりカドフェスで宮部みゆきの『ブレイブストーリー』を読みました。
今年は江戸を舞台にした話かと再び手に取る。

主人公となるのはおちかという名前の十七歳の娘で、川崎で旅籠を営む実家から叔父が袋物屋を営む江戸の三島屋へとやってきていた。
なにか曰くがあって生家から江戸へ逃れてきたのは最初に紹介されているが、その原因となった事件については物語が進むにつれて徐々に紹介されていく。
おちかは働くことで事件に思い煩う時間をなくしたいと、三島屋に来てからは女中代わりにせっせと働いて過ごしていた。

夫婦でせっせと針仕事をして行商人から店を構えるまでになった三島屋の主人でありおちかの叔父でもある伊兵衛と妻のお民は、生家に戻ることはかなわなくなったおちかを最初は養女として迎えるつもりだった。
だが本人の希望を受け入れておちかを店で働かせながら、人を怖ろしいものと感じて仏門に入りたいとさえ願った姪のことを温かく見守っている。
三島屋の番頭や女中のおしまにも助けられながら、おちかが江戸での生活に慣れていき、少しずつ外の世界へと馴染んでいく姿が描かれていきます。

百物語のきっかけとなったのは、三島屋の主が急な仕事で店をあけなければならず、招いていた囲碁仲間にお茶でも差し上げておいてくれとおちかに頼んで出ていった日の出来事だった。
客人はなぜか庭に咲いていた曼殊沙華を見て卒倒するほど驚き、自分が曼殊沙華を怖れるようになった過去の出来事をおちかに語って聞かせます。
客人はずっと胸の中に抱え込んできた因縁話をおちかに話すことでようやく過去から解放されるが、それをおちかから聞いた三島屋の主は一計を案じる。

何日か経って三島屋の主がおちかに言いつけたのは、「黒白の間」と名付けられた囲碁用の座敷を訪れる客人たちの話を聞いて主人に語ることだった。
今風の百物語を集めたいという意向を受けてやってくる客たちの話はどれも不思議なものであったり、不幸な過去だったりするが、それがおちかの心をどう動かしていくのか。
一話目となった「曼殊沙華」にはじまり、不思議な蔵を持つ屋敷の思い出を語った「凶宅」、おちか自身の過去の出来事を語った「邪恋」、そして一家を滅ぼすことになった恋と生霊の恐怖を語った「魔鏡」と続きます。
最後に四つの話をすべてまとめて人を喰らう屋敷での出来事が語られる。
話の飛びようも江戸時代という設定がすべて受け入れてくれるのがいいところ。
続きもあるようなので読んでみたいと思う。
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DB
DB さん本が好き!1級(書評数:2031 件)

好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。

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