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たけぞう
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葛飾北斎が娘、お栄とはあたしのこったい。
いやあ、まったく知りませんでした。
北斎には工房を支えてきた実の娘がいたのですね。三女のお栄です。
表紙は、お栄の画号である葛飾応為による「吉原格子先之図」。
東京渋谷の、浮世絵専門の太田記念美術館にあるそうです。

ところで表紙の絵、江戸時代の浮世絵ですよ?
自分の持っていたイメージとあまりにもかけ離れていました。
北斎の子孫なり弟子なりの系譜につながる人が書いたのかと思っていました。
現代の絵と言われても分からないですよ。

光と影のコントラストの中に浮かぶ、はめ格子越しの花魁。
夜の闇に包まれた構図は、妖しい艶やかさを含んでいます。
眩というタイトルをよくぞつけたと感心しました。
眩いのは絵だけでなく、絵師という世界に身をやつした葛飾父娘のことも
指しているのでしょうね。

光の表現はいろいろあります。
オーソドックスなのは、日中の光であれば黄色。
目がくらむ光は、白色にちょっぴりの差し色。
この絵の光は、白みのかった橙色をベースに、ちょっぴり青みを入れているように
見えます。粋ですね。思い切った色使いが冴えています。
そして何よりも、光に沈む闇の色が効いています。
絵を落ち着かせ、とても上品に見せています。

史実に基づいているのでしょうが、北斎の絵にお栄は深く関わっていたようです。
お栄自身の作品もいくつか残っています。それにしても目を引く作品ですね。
作中、お栄のこんな場面があります。
面相筆に持ち替えて、お栄は女の足指に爪を描き入れていく。いつものように、爪の生え際の横線は入れずに鉤形で留める。すると人は自ずと、そこにある甘皮を読み取るのだ。
描きすぎちゃあ、野暮になる。
親父どのはよくそう言っていた。
作中に、同じ意味の文章が言葉を替えて何度も出てきます。
それが粋ってもんだろうえ、そんな声が聞こえてくる作品です。

文章もとても魅力的です。
最初の二十ページで当たりを引いたと確信しました。
初めて読んだ作家さんですが、こいつはいけねえ、直木賞受賞作あたりに手を
伸ばそうと思います。
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たけぞう
たけぞう さん本が好き!免許皆伝(書評数:1463 件)

ふとしたことで始めた書評書き。読んだ感覚が違うことを知るのは、とても大事だと思うようになりました。本が好き! の場と、参加している皆さんのおかげです。
星の数は自分のお気に入り度で、趣味や主観に基づいています。たとえ自分の趣味に合わなくても、作品の特徴を書評で分かるようにしようと務めています。星が低くても作品がつまらないという意味ではありません。

自己紹介ページの二番目のアドレスは「飲んでみた」の書評です。
三番目のアドレスは「お絵描き書評の部屋」で、皆さんの「描いてみた」が読めます。
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よかったらのぞいてみて下さい。

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この書評へのコメント

  1. タカラ~ム2016-05-17 22:00

    葛飾北斎とその娘・お栄で思い出したのですが、昔、緒形拳が葛飾北斎、田中裕子がお栄を演じた映画「北斎漫画」ってのがありましたね。
     北斎漫画→http://www.kinenote.com/main/public/cinema/detail.aspx?cinema_id=17101

  2. たけぞう2016-05-17 22:36

    >タカラ~ムさん
    おやまあ、映画もあったのですね。
    北斎ぐらいは知っているつもりだったのに、全然知らなかったことが分かりました。
    学校で習う知識はしょせん入り口まで、興味を持ったら自分で広げないといけないのでしょうね。映画、そのうちレンタルしてみたいです。

  3. 星落秋風五丈原2016-05-19 20:55

    こんばんは。田中&緒形コンビの北斎映画も見ましたが、つい最近では杉浦日向子『百日紅』原作漫画がアニメになりましたね。また外国の方が書いたこんな本もあります。

  4. たけぞう2016-05-19 21:15

    >星落秋風五丈原さん
    どうもですー
    百日紅はちょっと前に新聞で知りました。面白そうですよね。
    そちらも見てみたいです。いろいろな作品があるんですね。

  5. No Image

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