仏教〈上〉第一部仏陀
生を苦悩に満ちた場所と捉え、苦悩の原因を滅却する(=解脱する)ことを根本に据える仏教。それは究極的には生の否定であり、欲望に塗れた私には余りにも遠い境地だ…
(下巻と併せての書評になります。) 著者のヘルマン・ベックはドイツ人の仏教研究家である。 し…
本が好き! 1級
書評数:36 件
得票数:785 票
自身が本を書いてもいますが、読み手としての自分も大切にしたいと思っています。それはつまり、その本が持っている良さを、ありのままに伝える努力をするということのように思っています。
生を苦悩に満ちた場所と捉え、苦悩の原因を滅却する(=解脱する)ことを根本に据える仏教。それは究極的には生の否定であり、欲望に塗れた私には余りにも遠い境地だ…
(下巻と併せての書評になります。) 著者のヘルマン・ベックはドイツ人の仏教研究家である。 し…
人に人生あり。その人生に重なるいくつかの本や登場人物。私にとってのホームズは人生に象徴的に重なり、今も魅了し続けてやまない。白い空を見上げた朝の胸の疼き、あるいは、取り戻した人生の欠片…
ツンドクさんの書評を拝見し即買いした本書。 小学校の図書室でその存在を知り、17才のときに購入した…
私たちにとっての地獄とは一体何だろう? 生きるだけでも十分おつりがくるくらい大変なのに、と本書を読んで改めて感じた。
宗教論の箸休めといっては芥川に失礼だが、ちょっと地獄について考えたくなり本書を手に取った。 もちろ…
読む側の意が問われる「梵我一如」の思想。底に他者への奉仕があるか否か。「利他」は特定の宗教や思想を超えた根本的な課題であり、それは確かにインド思想にも通底していた。
「ウパニシャッド」とはサンスクリット語で書かれた多数の神学書・宗教哲学書の総称である。 それらはイ…
真実の自己はアートマン(我)であり、アートマンは宇宙の真理・ブラフマン(梵)と同一である。インド哲学を象徴する「梵我一如」の思想。そうした構造の奥底に潜む罠を、私たちは見逃してはならない。
このところ宗教に関する書籍を読み重ねている。 古代中国の思想とキリスト教を通り過ぎ、今はヒンドゥー…
おそらくは本書のコンセプトであろう片隅から文藝を再び実らせるということと、コンテンツが私の中で上手く結びつかなったことがやや残念だった。
本書の内容からは外れるが、本書を読んで出版界の現状のことを想った。 端的に言えば本が売れない。 先日…
心に潜む狂気を呼び起こすもの。それはちょっとした偶然であるのかもしれない。もちろんそこに救いはない。乾いた感情だけが後に残る…
恥ずかしながらダフネ・デュ・モーリアの作品を読んだことがなかった。 そのことで少しだけ損をしたよう…
「宇宙の形」を想像する。ミレニアムの難問にまつわる多くの数学者の物語。ペレルマンの証明に関する後半部分は実に面白い!
アンリ・ポアンカレは、19世紀後半から20世紀初頭にかけて活躍した数学者であり、現代数学に多大なる影…
「四色問題」は単なる地図の塗り分けの問題でありながら、実は私たちがテクノロジーの発達と向き合うための課題を示唆している。
地図を塗る際に、隣り合うすべての国を違う色で塗り分ける。 そのために必要な色は何色か? 地図作成…
「神の歌」と題された本書の境地は遠い。だが遠くても構わない。愚者には愚者の道があるのだ。
本書は全18巻からなる大叙事詩『マハーバーラタ』の第六巻に収められている。 古代インドの王族アルジ…
天才とは一種の「凝縮」である。深い絶望と倦怠の果てに紡がれた詩篇の数々。触れる私たちは何を想うのか…
学生の頃、調子に乗って(というか、ちょっと気取ってみたくて)本書を買った。 読んでみたが上手く理解…
「どうも中心といふやうなものがないんで困つてをる」状況の中で、何がこの国を悲惨な戦争へと導いたのか。答え無き問いの中で悶える筆者の呻きが聞こえる…
本書は『ビルマの竪琴』で有名な著者による太平洋戦争の原因究明への試みである。 当時の軍や政府、財閥…
「ゆっくり行くと、日射病にかかる恐れがあります。けれども、いそぎ過ぎると、汗をかいて、教会で寒けがします。」あふれるような太陽は、時として人を非人間的に衰弱させる。だからすべては太陽のせいだったのだ…
ママンを亡くしたムルソーは養老院で通夜に参列する。 そこで彼はある錯覚に襲われる。参列者はみな「私…
「戯れは偶然と偶然の必然性とを肯定する。」(ジル・ドゥルーズ)
歴史は繰り返す。 より正確に言えば、私たちは繰り返しているように見える「歴史」を発見する。 もし…
ミタケ・オアシン!(私に関わるすべてに祝福を!) そんな豊かな精神性に心洗われる。
人間も自然の一部である(あるいは、自然の一部でしかない)と考えること。 何となく頭ではわかったよう…
「日本思想という病」を解明するための試みがまさに病の存在を象徴する。各著者の責任では決してないのだが、明治以降のこの国に深く根付いた闇を理解するには打ってつけの良書である。
五人の著者による「日本思想」を巡る課題の解説書である。 微妙に関心の対象はスライドしているが、二十…
宗教を理解するとは、「神」が人を殺す仕組みについて理解することである。
どうしても世界の宗教の概観をなぞりたくて本書を購入した。 特に、ゾロアスター教など善悪二元論の宗教…
「神の王国」は今もなお遠い。終末の訪れと救済を信じ、運命に殉じた「クムラン宗団」。宗教的知識がない人であってもその高潔な態度には触れることができる。
ヨルダン川西岸地区に死海は存在する。 塩分濃度が高く、「沈まない海」として知られる死海。 その北…
<帝国>は終滅することがない。繰り返されるこのフレーズにおいて<帝国>の意味するものは何か? それは私たちの「知性」という過ちに他ならない。
本書を読んでいて、以前に読んだ物理学者が書いた時間についての本を想い出した。 少し前の記憶なので正…
<コンタクト>は「素数」の長い数列と共に始まった。「未開の地」である地球に、<メッセージ>の送り主は何を示そうとしているのか(上巻と合わせての書評になっています)。
ある日、地球外知的生物を探索していたエリーのもとに奇妙な電波信号が届く。 それは宇宙の、おそらくは…