ウクライナの出身で、キエフ国立大学の文学部で日本語を学び日本に留学、東京大学で博士号を取得し、現在は首都キエフの大学で日本史を教えながら、作家、フリージャーナリスト、通訳と幅広く活躍しているという著者が、キエフの街並みなどの異国情緒溢れるかわいらしいスケッチを盛り込みながら、日本語で綴ったエッセー集。
大好きだったおばあちゃんの思い出。
一人暮らしのお母さんに会いに毎週田舎に帰省していた若い女性を襲った病。
歴史的な建物に伝わる悲恋の物語。
学校の先生の家に遊びに行ったときにみた白パンにあこがれて、自らも教師をめざしたという女の子の話。
著者が描くキエフの街並みやそこで暮らす人々を見つめる目はとても優しく、愛情に満ちあふれている。
けれども一歩踏み込むとそこにはチェルノブイリの原発事故がもたらしたあれこれや、ソ連時代の苦い思い出、隣国ロシアへの複雑な想いなど、ウクライナの歩んできた歴史と切っても切り離せない複雑なあれこれが見え隠れもする。
それと気づいて、重い重い歴史に打ちのめされそうになることもある。
それでも、やはり読み終えたあと思うのだ。
いつかこの本を片手にキエフの街を歩いてみたい。
あの角を曲がったらウラジーミル教会があるはず。
ああこれが彼女の言っていた「泣いている未亡人の家」に違いない。
そんな風に。
文字とスケッチで綴られた道案内を頼りに、平和で豊かな行き交う誰もが幸せそうにほほえみを交わすキエフの街を。
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