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サブタイトル通り、山尾悠子が偏愛する作品のアンソロジー

  • レビュアー: さん
  • 本が好き!1級
  • 山尾悠子偏愛アンソロジー 構造と美文
  • by
  • 出版社:筑摩書房
山尾悠子偏愛アンソロジー 構造と美文
 いやあ、とことん趣味が合う!
 そもそも山尾悠子さんご自身を私は愛しているのですが、その山尾さんが自ら編集した『偏愛作品』というのがこれまた私のツボに来る作品ばかりで、何と趣味が合うことかとうれしくなってしまうようなアンソロジーでありました。
 どのような作品を選ばれたかというと……。

○ バベルの図書館/J・L・ボルヘス
 ボルヘスのあまりにも有名な作品。無限に続く六角形の図書館を描き出し、そこにある無限の書はいずれも25の文字+記号の無作為な組み合わせで構成されていて、その膨大な組み合わせのほとんどは何の意味も読み取れないのですが、中には意味をなす言葉が見つかることも。
 このような万巻の書が揃っている図書館なので、つまりはどのような内容の本もどこかには存在するということになり、いまだ書かれていない本も含めて、全ての本が揃っている図書館ということになるという超奇想であります。
 この際限のない塔のような図書館は、山尾悠子自身の作品である『遠近法』(『夢の遠近法』所収)に登場する『腸詰宇宙』を連想させるもので、影響を受けたのだろうなぁと推測するところです。

○ アウトサイダー/H・P・ラヴクラフト
 遙かに高い塔を持つ城で暮らしている男はその城での生活に倦み果ててしまい、最早普通に上ることもできず、落下の危険もあるというのに、その塔に登り始めるのです。
 そうやって遂に登り切った先にあったものはというと……。
 山尾悠子は、本書巻末の『編者あとがき』で、塔の物語に惹かれるのだと書いています。

○ 落ちる娘/ディーノ・プッツァーティ
 超々摩天楼の上から身を投げた若い女性の物語。とにかく高いところからの落下なので、落ち切るまでにとんでもなく長い時間がかかるという『落下もの』であります。
 巻末『編者あとがき』で、同様の落下ものであるスティーヴン・ミルハウザーの『アリスは落ちながら』にも言及しているのはさすが。

○ 血まみれマリー/金井美恵子
 甘やかされて育ったマリーという女性の数奇な運命が描かれる童話のような物語。例の句点がなかなか出て来ない『金井文体』ではないのですよ。
 そっか~、金井美恵子さんもお好きだったのか。

○ 冥府燦爛/塚本邦雄
 おぉ、塚本邦雄まで! こういうのを好まれるところから山尾悠子さん自身が短歌を詠まれるようになったのでしょうか?
 この小説は地下街の下にさらに死者だけが入ることができる地下の街があるという物語で、退廃的、ペダンティックな作品です。私が持っている塚本邦雄の本のどこかに収録されていて読んだ記憶があるのだけれど、どの本だったかなぁ……。

○ 蘭房/澁澤龍彦
 山尾悠子さんは若い頃、澁澤を随分読まれたということですが、その中から『高丘親王航海記』の一部を抜粋して持ってきましたか~。澁澤は私も全集持っていますとも!
 親王らが『真臘(カンボジャ)』(原表記のママ)を訪れた際の奇譚です。

○ 中世に於ける一般人常習者の遺せる哲学的日記の抜萃/三島由紀夫
 膨大な数の人々を殺しに殺した者の日記であります。
 私、昔、三島由紀夫の全集を買おうかと考え、すんでのところまで行ったことがあるのですが(結局買わなかった)、今から思えば買って耽読していれば良かったかも……と思わないでもない(これから買うには本の置き場所がない~!)。

○ 室内/山尾悠子
 山尾悠子自身の作品も一編収録。円筒形の時計塔の周りを互いに反対方向に回り続け、出会ったところで言葉を交わす男女が描かれるという幻想的な作品です。

 その他、J・G・バラード、A・P・マンディアルグ、フリオ・コルサタル、マルグリット・ユルスナール、マルセル・シュオップ等々の私も好きな作家の作品が採られており、なんとまあと感激してしまいました。
 結局本書には採られなかったものの、『訳者あとがき』で挙げられている偏愛作品の中には、ジュリアン・グラック、マーヴィン・ピーク、稲垣足穂、中井英夫、ミルハウザー、ナボコフ、エリアーデなどなどの名前が並び、これまたいずれも私も好きな作家ばかりであり、本当に趣味が合う! とうれしくなってしまうのでした。

 これだけ趣味が合うのだから、私がそういう山尾悠子本人を愛するのもさもありなんというところでしょうか。
 深く同意のうなづきを繰り返した一冊でありました。


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■■■     普通(1~2日あれば読める)/315ページ:2026/03/22
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  • 掲載日:2026/04/30
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