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まるで親戚の伯父さんのような気持ちで

  • レビュアー: さん
  • 本が好き!1級
  • カフェーの帰り道
  • by
  • 出版社:東京創元社
カフェーの帰り道
 第174回直木賞受賞作(2026年)。
 嶋津輝さんの『カフェーの帰り道』は、東京・上野の片隅にある、あまり流行っていない「カフェー西行」で働く個性豊かな女給たちの姿を描いた連作短編集。
 5つの短編は「カフェー西行」という同じ舞台を描いているが、それぞれ時代が違う。だから、登場人物たちは次第に年をとっていく、そんな絵巻物のような仕掛けになっている。

 例えば、冒頭の「稲子のカフェー」では関東大震災から2年以上経った頃の話で、そこに登場するタイ子という女給は27歳ながら竹下夢二風の化粧で注目を集めている。
 それが4作めとなる「タイ子の昔」ではタイ子は44歳になって、一人息子は出征して戦地にいる。
 そういった展開の仕方はとてもうまい。
 最後の5作め「幾子のお土産」では終戦から5年が経った頃の「カフェー」で働く幾子という若い女性が主人公になっているが、そこにもかつてこの「カフェー」で働いていた女性たちが姿を見せる。
 読んでいて、それがなんとも懐かしい。
 彼女はこうなったんだ、よかったね、幸せになったんだ、みたいなまるで親戚か知人が思いを寄せるような気持ちで最終話にたどりつける。

 短編ではあるが、そういう点ではこの本の謳い文句、「大正から昭和にかけ、女給として働いた“百年前のわたしたちの物語”」として長編小説として味わうこともできる。
 今回の直木賞では満場一致で決定したといわれるこの作品、選考委員の宮部みゆきさんは「読んでいる人を幸せな気持ちにさせてくれる」と語っている。
 おそらく、多くの読者はそう感じるのではないだろうか。
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  • 掲載日:2026/04/29
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この書評へのコメント

  1. No Image
    ねねみみ2026-04-29 20:57

    評判になっていましたが、大正時代は嫌いなのでやめました。ほのぼのする作品なのですね。買えば良かったです。今でもメイドカフェなどは人気ですよね。大正時代が今、ブームなのでしょうか?本屋に行ったら買うのをもう一度考えてみます。

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