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江戸幕府は、農民が武士に成り上がる出世コースを用意していた。それを「励み場」という。

励み場
 戦国時代までは、日本全国、至るところに、領主がいた。それらが、戦いに敗れて、小さく残った領地を開墾して、農耕をする。領主自らするのではなく、かっての家来や人を雇って農業をするのである。この元領主を名主と呼び、働く農民を名子という。一般には地主がいて、その下で働く小作人が農業する。名子はその小作人より身分は低いとされていた。しかし、この名子には、特殊な出世コースが用意されていた。名子の中から幕府に推薦されて、勘定所の普請方になり、ここで認められれば勘定所の役人になりその後、勘定係に昇格するコースが設定されていた。農民から武士に身分が変われるということだ。これは全く知らなかった。そんなことが可能だったのか。驚きだ。

 主人公の信郎は石澤郡の元領主がやっている山花陣屋(農業耕作元締め)の手代として勤めていた。その間に智恵を娶り、つつましく2人で暮らしていたが、3年前に江戸勘定所に呼ばれ、夫婦とともに上京して、普請方として勤める。普請方は今の派遣労働者のような待遇なのだが、懸命に働けば、旗本勘定方により勘定方に引き上げられる道が開けていた。この普請方が巷間「励み場」と言われていた。

 そんな時、幕府が優秀農業指導者の褒章をすることになり、信郎と同じような経験を持つ久松加平が受賞者として内定していたのだが、その実態調査に信郎が出張ででかける。

 加平の情熱、革新、気概は素晴らしく、信郎はその取組に感動するのだが、翌日実地検証をしている時、幕府が禁止している塩硝を作っていることを知る。

 戦国時代、戦いで負け戦となった場合、最後は籠城してしのぐことになる。この場合、食料備蓄が必要となる。しかし大量の食料の大半が秋に収穫。それで、敵は秋に狙いを定め備蓄を防ぐ戦いをする。これに対抗するために収穫時期を早める必要がでる。そのためには肥料がいる。それに塩硝が使われたのだ。

 このことを報告書に正直に信郎が書く。これはダメだと勘定方から書き直しを命じられるが正直者の信郎は拒否する。それで、信郎は失職する。

 更に、妻の出生の秘密が明らかになり、夫婦も瓦解寸前となる。どうなってしまうのか信郎は。最後はミステリー調になりハラハラし通し。

 それにしても、青山さんは、通り一遍ではなく、文化、身分制度を精緻に調べ上げ、見事にそれを使い味わい深い小説にしたてあげる。

 肥料が収穫時期を変えるために作られはじめた。本当かわからないが、その目の付け所に感心してしまう。
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  • 掲載日:2026/04/29
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