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「わたし」の本、男、「雲日記」―1987年、ハンブルクにて

雲をつかむ話
『雲をつかむ話』多和田葉子著を読む。

「わたし」が刊行した日独二か国語で書いた詩・散文集を買いたいと男が来た。贈り物にしたいので和風な包装紙に包んでリボンをつけてともらいたいと。男は財布を忘れたので出直すと言って去った。それっきり、なしのつぶて。

しばらくして、その男から手紙が届く。男は犯罪者で逮捕され、いまは収監中だと。そこから不可思議な過去がさらされていく。毎度おなじみ異国―ドイツの風景がたんたんと広がる。そこで起きた夢うつつのさまざまな事件やエピソードが「雲日記」で、繰り広げられる。

短い話が、関係ないようで実はつながっている。読み手は、作者に欺かれたり、かどわかされたりしながら、しばし、エトランゼ気分で現実から逃げ込む。

『私小説』水村美苗著とも、通じる。外から見た日本、日本人であること。文化的差異。

例えば日本語で思考したものを、ドイツ語に翻訳して会話する。あるいはテキスト化する。その際の微妙な時差、温度差などは目を瞑るしかないのだろうか。

例えば地方出身者が、標準語で話すとき、最初は方言で考えて、それを変換しているのだろうか。素朴な疑問。

『オオカミ県』多和田葉子文 溝上幾久子絵
『地球にちりばめられて』多和田葉子著
『カフカ ポケットマスターピース 01』フランツカフカ著 多和田葉子編
『遣灯使』多和田葉子著
  • 掲載日:2026/04/30
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