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DBさん
DB
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聖ヨハネ騎士団の歴史の本
今回のトルコ対キリスト教国の戦いは、ロードス島を巡っての激戦だった。
ロードス島を守るのは聖ヨハネ騎士団の騎士六百人足らずに傭兵とロードス島民あわせて四千五百。
対するトルコの軍勢は三百隻の船に乗せられロードス島を目指す一万の兵に加え、陸路をスルタンと共に行軍してくる十万の兵、そしてシリアとエジプトからも二百隻の船と十万の船が送られてくることになっていた。
五千対二十万という圧倒的な差の戦いを、聖ヨハネ騎士団はどのように戦ったのか。
その詳細を追っていきます。

主人公となるのはアントニオ・デル・カレット、ジェノヴァ近くに領地を持つ侯爵の次男だ。
黒一色の聖ヨハネ騎士団の制服を身に付けた二十歳のアントニオはロードス島を目指す船上にいた。
「薔薇の花咲く島」という意味のロードス島は、温暖で色とりどりの花が咲く南の島だ。
アントニオの叔父ファブリツィオ・デル・カレットが先の騎士団長であったこともあり歓迎される。
現騎士団長のフィリップ・ド・リラダンに対面するため向かった本部で銀色に輝く甲冑をまとった騎士と出会う。
ジャンバッティスタ・オルシーニ、敵であるトルコ人にでさえその勇猛果敢ぶりを称えられる騎士だった。

もともと聖地巡礼におもむく巡礼者のために病院を兼ねた宿泊所をイェルサレムに建てたのが聖ヨハネ騎士団のはじまりだった。
十字軍が回数を重ねるにつれて、巡礼者の保護と医療といった仕事から軍事のほうへと性質が変わっていく。
同時期に創設されたテンプル騎士団、そしてチュートン騎士団と競いながら、パレスティーナの地で戦いに明け暮れその軍事力を増していっていた。
だがアッコン陥落により聖地がイスラム勢力の支配するところとなり、聖ヨハネ騎士団の生き残りはキプロスに逃れる。
同じくキプロスに逃れたテンプル騎士団がフランス王により滅亡させられたのに対し、病院を前面に押し出した聖ヨハネ騎士団はロードス島の制服に成功し1310年にはロードス島を本拠地とした活動が始まります。

時は流れ1520年に即位したスルタン・スレイマンは、「キリストの蛇どもの巣」となって目の前に残り続けているロードス島の征服を決意した。
トルコのスルタンから宣戦布告がなされた直後、アントニオと同じ船でヴェネツィア人の技師ガブリエル・ダディーノ、通称マルティネンゴもロードス島へ到着していた。
ロードス島の城塞監督を引き受けてほしいという騎士団長の依頼に、ヴェネツィア軍から脱走してロードス島へやってきたのだった。
だがヴェネツィア政府はこれを本人に知らせずに聖ヨハネ騎士団への援助として陰で後押ししていたあたりがヴェネツィアらしい。

このマルティネンゴの通訳を任されたアントニオは、騎士団長はじめとする幹部とマルティネンゴの真剣な会話から自分の叔父が築き上げたロードスの城壁の素晴らしさをはじめて知る。
それはいつでも戦いになる前提で備えを怠らなかった騎士団の姿勢のように思えます。
トルコ軍の使う大砲と地雷へ対抗するためマルティネンゴがたてた改築計画に従って工事は進められていった。
このマルティネンゴの作った城壁が聖ヨハネ騎士団の命運を決めたのだ。

1522年8月1日、ついにトルコ軍のロードス島攻撃が始まった。
十万を超えるトルコ兵と大砲の攻撃を迎えたのは、騎士団長リラダンをはじめとする六百人の騎士が甲冑姿で城壁に並んだ姿だった。
ここから激しい攻防戦が繰り広げられていきます。
スルタン・スレイマンの決意通り総力を挙げて攻撃してくるトルコ兵に対し、騎士団もキリスト教国からの援軍という望みを絶たれてさえよく戦った。
秋を過ぎ、冬になってようやく和平交渉が本格化する。
だが和平交渉にまでもってこれたのも、やはり騎士たちの働きとマルティネンゴによって築かれた城壁の堅牢さが大きかったのだろう。
五カ月の攻防戦の後、完全正装の十八人の騎士を従えた団長リラダンはスレイマンと面会する。
住民五千人と生き残った騎士たちが礼を持ってロードス島を去ったのは年が明けた元旦だった。
騎士団の戦いに熱く燃えた話でした。
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DB さん本が好き!1級(書評数:2034 件)

好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。

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