通勤の行き帰り、往復1回の1日で読み終えてしまいました。
なんだか軽いものを読みたい気になって読み始めたのですが、結構大きなテーマを扱っていましたよ。
一穂ミチの作品は、
『光のとこにいてね』、
『スモールワールズ』以来の3作目。
「彼女」は、関口新夏(にいか)、フリーの写真家、30歳。
「彼」は、神尾啓久(ひらく)、大企業勤めのシュっとした30歳。
二人を引き合わせた「合コン」主催者だった葵の結婚披露宴の写真撮影を請け負った新夏は、仕事後、式の二次会には出ず、実母(28年前に父と離婚)との面会へ。
ごく短い空き時間に、待ち合わせて会った新夏は、その折に啓久からプロポーズを受けます。
なんだか、バブリーな時代を髣髴とさせるような幕開けです。
披露宴は「新宿のホテル」、
新夏が母と会うのは「東京日本橋口近くにあるホテルのラウンジ」、
啓久との待ち合わせは「丸の内北口」から外に出た「広場」で、皇居前で結婚式の前撮りをしているカップルの話をした流れで、プロポーズへ。
ところが、その翌朝。
新夏は、突然、啓久の母から電話を受けます。
「警察から電話があって……啓久が、盗撮で捕まったって」
いやもう、びっくり仰天の展開でございました。
この後、
栗の渋皮煮とか、さまざまなフレッシュ・フルーツのジャム作りに精を出す啓久の母、
事件以来、弟を厳しく糾弾し続ける、啓久の姉の真帆子(3歳の娘の母)、
写真館を営む父、
新夏にとっての写真の師匠である玲子、
結婚した友人・葵、
といった人々とのやりとりをしながら、新夏は、その後の啓久との関係について迷い抜きます。
「この先もずっと2回目もあるんじゃないかって疑っちゃうから、信じきれないまま一緒にいるのはお互いにとってよくない」(新夏)
「盗撮するような人がたまたま今までしなかっただけって思うのと、盗撮しないはずの人がたまたまこのタイミングでしちゃったって思うのと、気の持ちよう次第じゃん」(葵)
なるほど、どちらの立場もわかる気がします。
また、真帆子のネットを使った、徹底した糾弾行動、
母親の、示談で済んだから傷はつかない、大したことじゃないという態度、
それぞれ、あるある!と言いたくなる反応ではあります。
新夏の迷い抜いた末の行動としては、コスプレ、ラブホテル、といったものまで登場。
さらに、
啓久を描く続編「恋とか愛とかやさしさより」では、盗撮された側からの視点、顔と肢体の関係、整形願望、親から子に対する人権侵害、YouTuberの闇、といったものも扱われます。
ネット上に拡散されていなくとも、一度「うわさになった」事柄から逃げることは至難の業、、、という怖さもひしひしと感じました。
今の世の中で問題になっていることがらを貪欲に取り上げた意欲作なのかな?
新夏も啓久も共感を覚える真摯な人たちと思えるだけに、ストーリーには歯がゆさも覚えますが、
テーマ的には、安易な結論は提示できないのかもしれませんね。
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