死と性愛が交錯する極上の短編集。8編が収録されている。
小池さんは私と1歳違い。私と住んだり、生きてきた場所はもちろん異なるが、同じ空気を吸いながら生きてきた。だから、多くの作家の中では、理解できるし、最も安心して読める作家である。
どの作品も味わい深い中で 何でこの作品を取り上げるのと顰蹙を浴びる、でもいいなあと感じた作品、「夜の庭」を取り上げる。
主人公は狭山美津子。美津子が23歳の時、父親が病死。母親は離婚をしていない。美津子は夫婦がやっている小さな印刷会社の事務員をしていた。給料は安かった。
父親は何をして働いていたかわからなかったが、死んだとき、2000万円の金があった。この金を9歳年上の兄と2等分にして美津子は相続する。ところが兄はこの金を使って喫茶店を始めるが、暴力団にまとわりつかれて、お金をまきあげられる。立往生した兄と妻は頭を下げて、美津子に金を所望する。それで美津子は1千万円を兄に貸すが、当然兄は金を返せるわけがなく、追い詰められて兄は首をくくる。
これで、今度は美津子が行き詰まる。仕方なく、美津子はスナックに勤めだす。このスナックは裏で売春をあっせんしていた。美津子はそこで知り合った小沼という男から声をかけられ、ホテルに行く。そこでことにおよんで、終わった後小沼が3万円をくれる。
それでクセになる。小沼とホテルに行く。そのたびに3万円が手にはいる。ところがある日から小沼と連絡がつかなくなる。
美津子は、以前病院の庭で杖をついた老人が躓いて転びそうになったところを体を張って助けたことがある。その老人が使用人として働いてくれないかという依頼を受けていたことを思い出し、老人に電話をする。老人は村松と言ったが、すぐ来てほしいと言われ、広大な土地を持つ村松の屋敷で使用人として働きだす。
ある日、美津子は別部屋にいた老人に呼ばれる。おー来たなスケベ老人と思い読み進む。老人は美津子にズボンのチャックを下ろさせ、一物を引き出させ、美津子に咥えさせる。そして老人が発射する。その後老人も3万円を美津子にくれる。
そんなことを何回か繰り返した後、また美津子が呼ばれる。そのとき老人はすでに下半身裸になって美津子を待っていた。そしていつものように美津子が加えてあげると、老人はおおきなうめき声をあげ本当に昇天してしまう。
今は、買春、売春、援助交際は人間追い詰められたとき万やむを得ないという雰囲気はない。しかし、私の青春時代には、まだ中学生の集団就職があって、都会であぶれた女の子たちがどうしようもなくなって、売春に走る子がたくさんいた。
この物語でも感じたが、人間というのはどん底におちいっても、死を選択することはまず少ない。何としても生きていこうとするものだと改めて感じさせてくれた。
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