かもめ通信さん
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正直ブラックユーモアもサスペンスもさほど好きではないのだけれど、「ナイジェリアの新星」に惹かれて読み始めてみたら……!?
ナイジェリアの新星が描くブラックユーモアと切なさに満ちたサスペンス
正直ブラックユーモアもサスペンスもさほど好きではないのだけれど、「ナイジェリアの新星」に惹かれて読み始めると、初っぱながこれだ。
ねえコンデ、殺しちゃった。と言ってアヨオラはわたしを呼び出す。
そんなセリフ、二度と聞きたくなかったのに。
ですよね。ですよね。
つまりはこれって、コンデとアヨオラが姉妹で、アヨオラが連続殺人犯ってことなんですよね?
生真面目で潔癖症の看護師コレデは、バスルームを磨き上げ、車の中も塵一つないほど完璧にかたづける。
この潔癖症こそが、美貌の妹アヨオラが引き起こした犯罪の隠蔽に、一役も二役もかっているという皮肉。
交際相手を次々と殺してしまう妹のアヨオラと、衝動的な妹に腹を立てつつも、なんとしても妹を守らなければと行動する姉のコンデ。
そこに姉のコンデが惹かれている若く優秀なイケメン医師が加われば、事件が起きないはずはない。
物語は姉コンデの視点で語られているため、真偽の程も含めて、あれこれと想像するしかないのだが、姉妹の間の共依存、姉妹とその母親と間に存在するもう一つの依存関係の裏に透けて見える、消すことの出来ない「父」の記憶など、かなりしんどい設定になってもいる。
にもかかわらず、吸引力は抜群で、ぐいぐい読めてしまうのは、場面の切り替えが絶妙で語りのテンポがいいからか。
ジェンダーをめぐるあれこれを含め、論点はいろいろあろうが、シリアスになりすぎることもなく、救いもないのに、後味は悪くない。
総じてあともう一歩!もうひと味!?という気もするのに、何だか妙に惹かれてしまうのは、アヨオラの瞳をのぞき込んでしまったから…というだけではないはず。
但し、物語の性格上、自身の「お姉ちゃん気質」にお悩みの方は、本作の取り扱いに注意が必要か。
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本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。
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- 出版社:早川書房
- ページ数:0
- ISBN:9784150019631
- 発売日:2021年01月07日
- 価格:1870円
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