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Wings to fly
レビュアー:
物語を読むとは、その世界に住む友達に会いに行くことなんだよ。
「読長町」は、いわゆる本の町である。全部で50店ほどの本に関する店が点在し、新刊本も希少な古書も、インテリア用から読みふけるための本まで、何でも揃う。またこの町には、本を愛し本に愛された男・御倉嘉市の生涯にわたるコレクションを収容した「御倉館」という建物があり、23万冊以上の本が置いてある。

読長町は、本好きならば住んでみたい夢の場所。しかし、ここにはとんでもない呪いがかけられていたのである。御倉館の本が一冊でも外に持ち出された時、それは発動する。

町は盗まれた本の世界に飲み込まれ、変貌を遂げてしまう。世界を元の姿に戻すため活躍する者の名は、御倉深冬という。嘉市の曾孫で父と二人暮らしの高校一年生、読書は大嫌いである。

この作品、全体としては冒険ファンタジー風だが、5つの章が全く違うスタイルで描かれる。盗まれた本によって世界が変わるというストーリーに応じて、マジックリアリズム、ハードボイルド、スチームパンクなどなどバラエティに富んでいる。
お馴染みのご近所さんがストーリーが変わる度に違う役で登場したり、味付けもコミカルで、作者も今までのシリアスな作風から一歩抜け出そうと冒険している感がある。

盗まれた本のストーリーが面白く、終盤になるに従い「呪いの正体」への謎解き要素も加わって、思いがけない方向に展開する。そのスピード感はなかなか心地よいものであった。惜しむらくは、呪いを仕掛けた張本人の「なぜそんなにまで本の世界を人と共有することを拒んだのか」という理由が弱いことか。

本書の広告に「極上の”現実逃避”保証します」とあった。読書は確かに現実逃避の一手段ではあるけれども、それ以上に「本の中に友だちを作る」また「本の中の友だちに会いに行く」という積極的な行為でもあるのだ。深冬がそれに気がつくラストのシーン、胸がポカポカ温かくなる。
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Wings to fly
Wings to fly さん本が好き!免許皆伝(書評数:862 件)

「本が好き!」に参加してから、色々な本を紹介していただき読書の幅が広がりました。

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この書評へのコメント

  1. かもめ通信2020-12-10 16:48

    これ面白かったけれど,レビュー書くの難しくない?(←書くのを諦めた人σ(^_^)

  2. Wings to fly2020-12-10 20:15

    かもめ通信さん
    私は常に、レビュー書くのに四苦八苦してるのでございます(TT)
    特にこの作品が、ということは無かったですが、最近は「どれも難しい」状態で、頭脳と感性の老化をつくづく感じる今日この頃です(ため息)。
    えー、本書には全く関係ない話題で恐縮ですが『後宮の烏』の最新刊が今月発売ですね。

  3. かもめ通信2020-12-10 20:30

    『後宮の烏』楽しみですね~!

    こちら↓はもう読まれましたか?
    私はちょうど読み始めたところです。

  4. Wings to fly2020-12-10 20:54

    同志よ!昨日入手いたしました。週末のお楽しみでございます( *´艸`)

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