江戸川乱歩編『世界推理短編傑作選』を擁する創元推理文庫が21世紀の世に問う、新たな一大アンソロジー。およそ二百年、三世紀にわたる短編ミステリの歴史を彩る名作・傑作を評論家の小森収が厳選、全6件に集成する。
と、東京創元社が裏カバーの紹介文で高らかにぶち上げたアンソロジー集『短編ミステリの二百年』。その「1」を読んでみた。
上に引用した紹介文にもあるように、このシリーズは江戸川乱歩による『世界推理短編傑作選』に続くものとして企画された、小森収の個人編集によるアンソロジー集である。各巻は小森の選んだ短編ミステリと、小森による収録作の解説も兼ねた評論「短編ミステリの二百年」の2部構成になっている──というふうに見えるが、本当のところは評論こそがメインで、収録された短編たちはその付録という位置づけなのではないかと思われる。
その評論で、小森は(ミステリのみならず文芸まで包括した)該博な知識の裏打ちの下で「短編ミステリの二百年」を概観し、それを論文のような固い感じではなく「です・ます」調のざっくばらんな語り口で読ませる。この中で小森は数多くの短編を俎上に載せて縦横に論じているが、一切断りなくモロにネタばらししている(*_*;;)ので、読む際には注意が必要だ(ちなみに取り上げられている短編のうち、本書収録作は太ゴシックで、また未収録だが小森の推薦作は*付きで表記されている)。
この「1」にはサキ、アンブローズ・ビアス、コーネル・ウールリッチ、ジョン・コリアなどと並んでサマセット・モームやウィリアム・フォークナーといったビッグネームも名を連ね、収録作は12編。うちサキだけは2編が収録されている。
この手の個人編集によるアンソロジーは、読み手の趣味趣向と編者のそれが合致するかどうかで評価が大きく変わると私は思っている。そして残念ながら、私は小森のそれとは合わなかったようだ。評論の中で展開される小森の作家評、作品評に同意できる部分が少なく、収録作も(さすがにつまらない作品はなかったものの)「これは凄い!」と感じるものもなかった。その中で私がコメントしたいと思う作品があるとすれば、サキの「セルノグラツの狼」だろうか。本作は皮肉の効いたラストがいかにもサキらしいが、私はそこよりも短い紙数の中で、ある一族の栄光と終焉を鮮やかに描いてみせた(ラストもまたその1つの要素としてある)点を評価したい。
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