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DBさん
DB
レビュアー:
極限状態で現れる存在についての本
サードマン。
それは危機的な状況の時に現れる存在だそうだ。
時にはそばにいるだけで気持ちを落ち着かせ、ある時は助言をくれる。
クライマーの間ではよくある現象だそうです。
本書ではそのようなサードマン現象と呼ばれる存在が現れた事例を多数あげて、どのような状況下で現れるのか、そしてサードマンが人々にどのような影響を与えるかを考察している。

まず最初に出てくるのは911のテロの時、ワールドトレードセンターから脱出した男性の体験談だ。
炎と煙に包まれた階段を、サードマンの助けで乗り越えて脱出できたそうです。
山登りで雪崩に巻き込まれ、全身に重傷を負ったにもかかわらず生還した男性のサードマンは女性のように感じられたそうです。
そして洞窟ダイビング中に出口がわからなくなった女性を助けたのは、彼女の亡くなった夫だった。

エンデュアランス号が漂流した時にシャクルトンが出会ったサードマンが、この現象が認知されたはじまりになっている。
極地探検家や戦争捕虜、単独航海者、パイロット、宇宙飛行士、海難事故の生存者といった極限状態で命に向き合ったことのある人々が同じような存在と出会った体験を持っているそうだ。
さらにもっと身近な例としては、配偶者を亡くした後でも亡くなった人の存在を感じることもある。
中には医学部進学がかかった試験のために猛勉強している時、シャワーの最中で現れたサードマンもあります。

サードマンとは、人間が絶対の孤独と困難の前に感じるストレスを緩和させるために生み出した幻影のように思える。
自分自身で安らぎや助言を導き出しているのだと。
側頭頭頂部への電気刺激でそのような存在が出現するとの実験も紹介されていた。

なぜ雪山での出現が多いのかについて考えていると、サードマンとは別に思ったことがある。
死を覚悟して雪山へ挑む人々の心理が理解できなかった。
有名になるほど生存率も低いだろう。
命をないがしろにしているようにしか見えなかったからだ。
しかしサードマンが最も現れるというクライマー達とは、最も冷静に生きたいと思っている人でもあるのかもしれない。
死を恐るわけではないが、求めているわけでもない。
そんな心境なのかもしれないと思った。

サードマンの延長上、もしくはバリエーションとして宗教的な神秘体験も本著では挙げられている。
直接的にそれらがすべて脳神経学的に解明できるものと断じているわけではない。
だが臨死体験もサードマンと同じような現象が起こっていると思う。
死への恐怖といったストレスに対して、人間は死後の世界や霊的な存在を作り出してきたのではないだろうか。
無が楽園となり、一瞬が永遠となる。
人間の精神の複雑さを垣間見た気がした。
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DB
DB さん本が好き!1級(書評数:2033 件)

好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。

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