Yasuhiroさん
レビュアー:
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杉村三郎シリーズ第二弾。吉川英治文学賞を受賞したその筆致は圧倒的ではあるが、毒毒毒の連続に気分が悪くなる。フィクションとは言え小説家とはここまで残酷になれるのかと思ってしまう。
続いて杉村三郎シリーズ第二弾「名も無き毒」です。杉村三郎と彼を取り巻く人々、環境が第一作の「誰かーSomebody」で提示されていますので、二作目はすっと作品世界に入っていけます。
『今多コンツェルン広報室に雇われたアルバイトの原田いずみは、質の悪いトラブルメーカーだった。解雇された彼女の連絡窓口となった杉村三郎は、経歴詐称とクレーマーぶりに振り回される。折しも街では無差別と思しき連続毒殺事件が注目を集めていた。人の心の陥穽を圧倒的な筆致で描く吉川英治文学賞受賞作。(AMAZON解説より) 』
手あたり次第悪意という毒をまき散らす女、猛毒の青酸カリによる連続殺人事件、土壌汚染と言う毒、毒の三題噺と言った趣です。
この三つの毒を巧妙に絡め、杉村三郎とその家族を窮地に追い込んでいく宮部みゆきのプロットは相変わらず巧みですし、その丁寧な文章はもう抜群の安定感で。AMAZON解説にもあるように「圧倒的な筆致」でもあります。文学賞を受賞して当然でしょう。もちろん感動もします。
ただ、全編でまき散らす毒に当たり気味のせいか、その感動がイマイチ弱い、と思うのは彼女にあまりにも多くを求め過ぎでしょうか。また毒に重きを置くあまり、人物造型がやや浅い気もします。
それにしても、この原田いずみという女のまき散らす毒はすごい。
特に、何の罪もない兄の結婚式の最後で場を混乱の極みに落とし込み、後に兄の妻を自殺させることにもなった、嘘で固められた壮絶なスピーチは
えぐい
の一言。読むのが辛く目を覆いたくなるほどです。小説家はフィクションとは言え、ここまで書けるのかと思ってしまいます。
閑話休題、二作を読んでどうにも気になるのが、杉村三郎と言う人物にそれほどの魅力がないところです。前回も書いたように連作を意識してわざと主人公を浅く書いているのかもしれませんが。
今回巨大コンツェルン会長の愛娘である、元々病弱な妻菜穂子が心理的にもかなり痛手を蒙っていますので、次作「ペテロの葬列」では家族にそれ相応の波風が立つのかもしれません。
宮部みゆきの社会派作品を読むシリーズ
理由
模倣犯
ソロモンの偽証
誰かーSomebody
『今多コンツェルン広報室に雇われたアルバイトの原田いずみは、質の悪いトラブルメーカーだった。解雇された彼女の連絡窓口となった杉村三郎は、経歴詐称とクレーマーぶりに振り回される。折しも街では無差別と思しき連続毒殺事件が注目を集めていた。人の心の陥穽を圧倒的な筆致で描く吉川英治文学賞受賞作。(AMAZON解説より) 』
手あたり次第悪意という毒をまき散らす女、猛毒の青酸カリによる連続殺人事件、土壌汚染と言う毒、毒の三題噺と言った趣です。
この三つの毒を巧妙に絡め、杉村三郎とその家族を窮地に追い込んでいく宮部みゆきのプロットは相変わらず巧みですし、その丁寧な文章はもう抜群の安定感で。AMAZON解説にもあるように「圧倒的な筆致」でもあります。文学賞を受賞して当然でしょう。もちろん感動もします。
ただ、全編でまき散らす毒に当たり気味のせいか、その感動がイマイチ弱い、と思うのは彼女にあまりにも多くを求め過ぎでしょうか。また毒に重きを置くあまり、人物造型がやや浅い気もします。
それにしても、この原田いずみという女のまき散らす毒はすごい。
特に、何の罪もない兄の結婚式の最後で場を混乱の極みに落とし込み、後に兄の妻を自殺させることにもなった、嘘で固められた壮絶なスピーチは
えぐい
の一言。読むのが辛く目を覆いたくなるほどです。小説家はフィクションとは言え、ここまで書けるのかと思ってしまいます。
閑話休題、二作を読んでどうにも気になるのが、杉村三郎と言う人物にそれほどの魅力がないところです。前回も書いたように連作を意識してわざと主人公を浅く書いているのかもしれませんが。
今回巨大コンツェルン会長の愛娘である、元々病弱な妻菜穂子が心理的にもかなり痛手を蒙っていますので、次作「ペテロの葬列」では家族にそれ相応の波風が立つのかもしれません。
宮部みゆきの社会派作品を読むシリーズ
理由
模倣犯
ソロモンの偽証
誰かーSomebody
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馬鹿馬鹿しくなったので退会しました。2021/10/8
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- 出版社:文藝春秋
- ページ数:607
- ISBN:9784167549091
- 発売日:2011年12月06日
- 価格:890円
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