紅い芥子粒さん
レビュアー:
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たった数日間の物語なのに、読んでも読んでも前に進まない。まるで、行けども行けども「城」に行きつけず、村をウロウロするKのように……
未完の大作。文庫本で620ページ。分厚い本である。生易しい本ではなかった。
難解なのである。登場人物の科白が異様に長く、読んでいるうちに、この人なにいってるの?と思うことが、しばしば。
たった数日間の物語なのに、読んでも読んでも前に進まない。
何度もくじけそうになって、自分で自分を励ましながら読み続けたのに、未完。
徒労感が残る。
さて、小説について。
主人公は、「K」と記号のように記される。
Kが、雪に覆われた、ある村に到着したところから始まる。
Kの職業は測量士である。
測量士として召し抱えたいという城からの召喚状に応じて、やってきた。
城とは、村の領主である伯爵の城である。
遠くの町から、苦しい旅をして来たのだという。
村へ着いたのは、夜だった。
宿屋から城へ電話をかけるが、城へは来るなといわれる。
明日も明後日も永遠に来るなといわれる。
Kを測量士として任命したのは、城の長官で、Kの上司は村長。
そこまで決まっているのに、Kは城から拒まれるし、何の仕事も与えられない。
Kは、なんとかして城に行こうとするが、行きつくことができない。
宿屋とか、酒場とか、小学校とか、城下の村をうろうろするばかり。
宿屋の主人、酒場の亭主、おかみさん、靴職人、村長、村長夫人、城から任命されたという測量のことなんか何も知らない二人の助手、小学校の教師……、様々な人たちと関わるが、彼らには、みんなちゃんとした名前がある。主人公だけが、K。記号なのである。
おまえは村では何者でもない、よそものだから、Kでけっこう、とでもいうように。
城山の城は、荘重でも荘厳でもない。
古ぼけた百姓家を寄せ集めたようなつまらない建築物である。塔がひとつあるだけ。
その城で執務する役人と、村人には決定的な身分差があるようだ。江戸時代の武士と町人のような感じ。役人となるとけっこう大変そうなので、村人のあこがれの身分は役人の従僕だという。城で暮らせて、気楽だから。
Kという人物もなんだかよくわからない。
「故郷に妻と子を置いてきた。城の測量士として働いて、ひと稼ぎしたら妻子のもとへ帰る」、最初の夜、宿でKは、そう話していた。
なのにKときたら、翌日、酒場で出会った娘を口説いて結婚の約束をして、そのあくる日から小学校の空き教室で同棲を始める。きみと結婚して、村に定住したいなんていう。
最初の夜、Kは宿で、こんなこともいっていた。
測量の道具をごっそり車に積んで、助手たちが間もなくやってくる、と。
ところが、そんな助手たちはやってこなかった。
二人の若者が、助手と称してやってきたが、彼らは城から指名された村の若者だ。
測量にはまったくしろうとの。
Kは、あっさり二人を助手として受け入れ、下僕のように使い始める。
測量の助手ではなく、私生活の召使として。
Kがほんとうに測量士かどうかも、怪しくなってくる。
Kとは、いったい何ものであるか。
カフカは、ユダヤ人の商人の子として生まれ、若くして結核を病み、41歳で没したという。「城」を完結させられなかったことは、さぞ心残りだったことだろう。
異邦人として異端視されてきたユダヤの民。
Kは、KafkaのKか!そう思いついたことだけが、この未完の大作を読み終えた唯一の収穫だったとは。我ながらなさけない。
難解なのである。登場人物の科白が異様に長く、読んでいるうちに、この人なにいってるの?と思うことが、しばしば。
たった数日間の物語なのに、読んでも読んでも前に進まない。
何度もくじけそうになって、自分で自分を励ましながら読み続けたのに、未完。
徒労感が残る。
さて、小説について。
主人公は、「K」と記号のように記される。
Kが、雪に覆われた、ある村に到着したところから始まる。
Kの職業は測量士である。
測量士として召し抱えたいという城からの召喚状に応じて、やってきた。
城とは、村の領主である伯爵の城である。
遠くの町から、苦しい旅をして来たのだという。
村へ着いたのは、夜だった。
宿屋から城へ電話をかけるが、城へは来るなといわれる。
明日も明後日も永遠に来るなといわれる。
Kを測量士として任命したのは、城の長官で、Kの上司は村長。
そこまで決まっているのに、Kは城から拒まれるし、何の仕事も与えられない。
Kは、なんとかして城に行こうとするが、行きつくことができない。
宿屋とか、酒場とか、小学校とか、城下の村をうろうろするばかり。
宿屋の主人、酒場の亭主、おかみさん、靴職人、村長、村長夫人、城から任命されたという測量のことなんか何も知らない二人の助手、小学校の教師……、様々な人たちと関わるが、彼らには、みんなちゃんとした名前がある。主人公だけが、K。記号なのである。
おまえは村では何者でもない、よそものだから、Kでけっこう、とでもいうように。
城山の城は、荘重でも荘厳でもない。
古ぼけた百姓家を寄せ集めたようなつまらない建築物である。塔がひとつあるだけ。
その城で執務する役人と、村人には決定的な身分差があるようだ。江戸時代の武士と町人のような感じ。役人となるとけっこう大変そうなので、村人のあこがれの身分は役人の従僕だという。城で暮らせて、気楽だから。
Kという人物もなんだかよくわからない。
「故郷に妻と子を置いてきた。城の測量士として働いて、ひと稼ぎしたら妻子のもとへ帰る」、最初の夜、宿でKは、そう話していた。
なのにKときたら、翌日、酒場で出会った娘を口説いて結婚の約束をして、そのあくる日から小学校の空き教室で同棲を始める。きみと結婚して、村に定住したいなんていう。
最初の夜、Kは宿で、こんなこともいっていた。
測量の道具をごっそり車に積んで、助手たちが間もなくやってくる、と。
ところが、そんな助手たちはやってこなかった。
二人の若者が、助手と称してやってきたが、彼らは城から指名された村の若者だ。
測量にはまったくしろうとの。
Kは、あっさり二人を助手として受け入れ、下僕のように使い始める。
測量の助手ではなく、私生活の召使として。
Kがほんとうに測量士かどうかも、怪しくなってくる。
Kとは、いったい何ものであるか。
カフカは、ユダヤ人の商人の子として生まれ、若くして結核を病み、41歳で没したという。「城」を完結させられなかったことは、さぞ心残りだったことだろう。
異邦人として異端視されてきたユダヤの民。
Kは、KafkaのKか!そう思いついたことだけが、この未完の大作を読み終えた唯一の収穫だったとは。我ながらなさけない。
掲載日:
書評掲載URL : http://blog.livedoor.jp/aotuka202
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読書は、登山のようなものだと思っています。読み終わるまでが上り、考えて感想や書評を書き終えるまでが下り。頂上からどんな景色が見られるか、ワクワクしながら読書という登山を楽しんでいます。
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- ページ数:630
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