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すずはら なずな
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七巻まである長編。一巻は差別問題を主人公の少年の立場で見つめる。
重い内容の本だ。

映画化も二度されているけれど、様々な事情で問題になったり、より想いを伝えるべく創り直したはずの二作目の出来も微妙だったり、と経緯を確認していくと、テーマと表現と想いを伝えることの難しさを強く感じてしまうのだ。



物語の初めの方は小森の部落に生まれた畑中誠太郎 孝二兄弟とその家族 逞しくたのもしい祖母と優しい母を中心に話は進む。
彼らの住む差別される部落の小森と その他の地域に住む子供たちが一緒に通う小学校での日々。
母や祖母に心配をかけないよう、学校での嫌な出来事を隠しながら勉強に励む兄弟は、成績優秀だ。
けれど、先生という名の人たちでさえ、差別意識は根深くて、あたりまえのようにその意識をむき出しにする。(江川先生だけは別なのが救いでもある)


勉強を頑張って、他の者を圧倒したい、でもどうやったって成績は他の者に先を越される。先生の評価が絶対だからだ。

いわれない差別にかっとなって抵抗したら、責められる。謝れと言われる。その理不尽。くやしさ。


一巻ではこどもの彼らの目で、身分の上下について 考えれば考えるほど理不尽な「あたりまえ」に疑問を投げかける。

村に起こる火事の災い、天候不順による稲の不作とそれでも厳しい搾取、日々の困窮の中のつましい生活。

他の村を抜けて親戚のいる村に行くときの恐怖。



子供の頃は「同和」の授業や作文の宿題があったが、この地域に住む誰のこととも考えず、勿論それを教えられることもなく、実にぼんやりと「差別をなくそう」などの作文をこなしてきた。

せめて この物語の子供たちの名前を知り、生活を共にした気持ちで考えることができたら、もっと意義深い内容の授業になったことだろうと思うのだ。


地域こそ違っても 皆の使う関西弁がとてもなめらかで、声に出して読みたくなった。風景の描写、気持ちの動きも丁寧に描かれていて、引き込まれました。





第8部は表題のみを残し作者のすゑが死去しているとのこと。持っている巻まで、時間をかけてもいいから ちゃんと読んでいこうと思う。
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すずはら なずな
すずはら なずな さん本が好き!1級(書評数:439 件)

電車通勤になって 少しずつでも一日のうちに本を読む時間ができました。これからも マイペースで感想を書いていこうと思います。

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この書評へのコメント

  1. 紅い芥子粒2021-03-01 20:44

    ずいぶん昔のことですが、夢中になって読みました。祖母と母親が、料理をする場面が、よく出てきたように思います。畑から分葱をとってきて、酢味噌であえるとか……。貧しさの中でも、丁寧に生活している人の描写が、心に残っています。

  2. すずはら なずな2021-03-01 21:22

    紅い芥子粒さん、
    そうそう、食べるシーンもよく出てきます。薄いおかゆの日々、たまにおもちが入ったり、甘いものが出てきたらうんと美味しそうに感じたり。
    どんな食事シーンも この家族の繋がりは温かくていいですね

  3. No Image

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