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DBさん
DB
レビュアー:
恋と嫉妬に揺れる田園物語
男装の麗人として知られショパンやリストをはじめ数々の恋愛で浮名を流したジョルジュ・サンドの話なのでどんな話なのかと思って読んでみました。

前書きでは当時激動の中にあったフランスの現状への嘆きと芸術家としての使命について熱く語っている。
だが本編はほのぼのとしていて、繊細に人の感情を描き出した田園小説だった。

フランスのコッスという村のちょっと裕福なバルボーという男の家に双子の男の子が産まれるシーンで始まります。
金髪に青い瞳の双子は見分けがつかないほどよく似ていて、仲が良くていつも一緒だった。
兄のシルヴィネは優しくて情が細やかなところがあり母親のお気に入り、しっかりしていて勇気がある弟のランドリーは父親のお気に入りだった。

彼らが十四になった時、それまで常に一緒だった双子のどちらか片方を奉公に出すという話になった。
家を出ていったのはランドリーで、そこから双子の関係も徐々に変化していく。
外の世界で働くようになってより自立してきたランドリーと、弟との別離をいつまでも引きずって嫉妬さえするようなシルヴィネの心理を細かく追っていく。
別離といっても歩いていけるくらい近くて毎週日曜になると帰ってくるんだけどね。
一足早く大人になった弟といつまでも子供時代にしがみついている兄の別離といった方が近いかもしれない。

拗ねて家出したシルヴィネを探しに、ランドリーは魔女めいた存在のファデー婆さんのところへ行こうとしてその孫娘のファデットと出会う。
双子よりひとつ年下のファデットは、「こおろぎ」とあだ名されるくらい色が黒くてお転婆で小鬼のようだった。
祖母がひとりで育てているためボロのような格好だったが、ランドリーに恋したようだ。
恋の力か野生児のようだったファデットは知性のある女性へと変貌していく。
最初は迷惑に思っていたランドリーもすっかり恋の虜になるが、これにシルヴィネは嫉妬せずにはいられない。

双子の感情を通して人とのコミュニケーションがうまくいかない時の人の内面を両方の側から描いているように思った。
気をまわしすぎて裏目に出たり、相手の感情を読み違えたり。
こうして客観視しているともどかしく思えるけれど、実際に相手の心を読み違えることがどれほどあるだろう。
双子なんて生まれたときから一緒の一番近い存在でさえそうなることもあるのだから、他人なんてなおさらだ。
感情を豊かに観察しているという点で、現代にも通じる作品だったと思います。
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DB
DB さん本が好き!1級(書評数:2026 件)

好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。

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