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現代社会に必須の教養、三大宗教の基礎を押さえる

  • レビュアー: さん
  • 本が好き!免許皆伝
図説・ゼロからわかる 三大宗教の読み方
社会のグローバル化に伴い、さまざまな文化とふれあう機会も増えつつある現代。人もものも流動化し、もはや狭い範囲の常識だけ知っていればよいという時代ではない。
異文化との交流において違いを感じるのは多々あることで、知らないがゆえの誤解も多い。相手が常識と思っていることをこちらが知らない、あるいはこちらの常識が相手に理解されないことから生じる摩擦もある。
特に、こと宗教に関しては、相手がどのような信条に基づいて行動しているかがわからずに奇異に感じたり、また相手が非常に大切にしているものを知らず知らずのうちに冒涜して怒りを買ったりする場合もある。
また、各地で起こる紛争の陰には往々にして宗教上の対立がある。対立は昨日今日生じたものではなく、長い歴史を背負っていることが多い。ニュースを理解する上でも、主だった宗教がどのようなもので、どのように生まれ、広がってきたかを知ることが重要になる。

本書は国際化社会の社会人向けにキリスト教・イスラム教・仏教の3つの宗教の成り立ちをざっとおさらいしようという1冊である。
各宗教に関して30項目ずつ、それぞれが見開き2ページに、図表入りでまとめられている。成立の歴史から、信者の日常、豆知識、よくある疑問などがポイントを押さえて簡潔に説明される。
著者の肩書きは予備校講師だが、すっきりまとまった板書やプリントを思わせる、わかりやすい作りになっている。
各項目が短いので、例えば通勤電車や昼休みなど、細切れ時間にも少しずつ読み進められるし、興味を惹いた項目を拾い読みするのもよいだろう。
なるべく「色つき」でない、基礎的な事項をまとめているのも本書の長所である。過激派組織IS形成の背景など、新しい事象までカバーしている点も親切だ。
それぞれの宗教について興味を惹かれたならば、さらに深く知る、その手引きとなる1冊と言える。

個人的には、イスラム教の項目が非常におもしろかった。
ムハンマドの生涯についてはほとんど知らなかったが、まさしく波瀾万丈だ。貧しい商人の子として生まれ、幼いときに両親を亡くし、裕福な姉さん女房と結婚し、しばらくは平穏に暮らしていたが、突然啓示を受けた。自身では最初は悪霊に取り憑かれたと思っていたが、妻に啓示は本物だと励まされ、預言者になったという。イスラム教の教義のうち、商業活動は認めつつ、孤児や貧しいものを救済する姿勢は、ムハンマドの出自を色濃く反映しているようにも見える。一夫多妻も戦乱の多い地での、いわば寡婦の救済措置だった側面が強いというのも興味深い。
「コーラン」は正式にはアラビア語で読まねばならず、翻訳も認められていない(外国語で読めるものは「解説書」であるという扱い)。アラビア語圏の外でなかなか理解が進まないのはそのあたりも大きいだろう。

イエス・キリストやシッダールタの生涯も相当にドラマチックでおもしろい。不謹慎かもしれないが、宗教者の人生が語り伝えられてきた背景には、信仰心だけでなく、純粋に物語としておもしろいという面もあるように思う。

3つの宗教を並べてみていくと、おぼろげにその相違点や共通点が浮かび上がってくるようでもある。
キリスト教はそれまでのユダヤ教の厳しい戒律を守らなくても信仰により救われると説いた。イスラム教は、部族ごとの争いの中で生まれた孤児や寡婦、商業の発展に伴って生まれた貧富の格差を埋めるため、富むものが貧しいものを支援するべきだと説いた。こうした主張は、虐げられた層から圧倒的な支持を得る。仏教は少し毛色が異なり、世俗の虚しさを知り、執着を捨てよと説いた。このいささか哲学的で現実離れした主張は庶民層には受け入れられず、ために生まれた地インドではよりわかりやすいヒンドゥー教に取って代わられることになる。
聖と俗。厳格さと寛容。教義が苛烈になれば、去っていくものも増える。反権威として生まれたものがいつの間にか権威となり、それに反するものがまた生じることもある。歴史の大きなうねりの中で、宗教もまた変容し、ときには隆盛し、ときには衰退する。
互いが広がる勢いが強ければ、その途上で、ぶつかり合い、反目することもある。

どの宗教も人々を幸せにするために生まれたはずなのに、ときとして紛争の種になるというのも皮肉なことだ。
ひとたび培われた自身の信条を大切にしながら、彼我の違いを知り、相手を尊重する姿勢が今後ますます大切になっていくのだろう。


*献本ありがとうございました。勉強になりました。
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  • 掲載日:2015/11/15
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