DNAの二重らせん構造を発見した科学者が、発見50周年を記念して執筆した入門書。生物の進化、人類の拡散、病原遺伝子など、広範囲で面白い話題と、ほどよい難易度で、お腹いっぱい楽しめる。
DNAが発見される前から、生命自然発生説を否定するパスツールの実験などで生命の神秘性が揺らいでいたが、それでもなお生命の複雑さの前に、物理・化学では生命の不思議を解明できないでいた。
DNAの発見をきっかけに、生命は単なる科学作用の産物だということが分かってきたという。それからのDNA研究の発展はめざましく、品種改良、遺伝的病気の解明などが進んでいる。研究が進むと、いよいよバイオテクノロジー、バイオビジネスが生まれる。人類の叡智の共有か、資本家や発明家の権利確保か、という争いが激しくなってきたという。一方で、人為的な遺伝子操作による不測の事態や、人種差別に対する警戒感のために、遺伝子研究を良いと思わない力が今でも働き続けている。
いずれにせよ、DNA研究は止まらない。研究は、究極の謎、ヒトゲノムの解明に突き進む。
第一線で活躍してきた筆者の語りがとても面白い。そして、DNA研究に込める気持ちが純粋で、熱い。この分野で起きてきた歴史を一つひとつたどっていく、素晴らしい経験をした。
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