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あの著名長編を書いた作家の短編が読めるのか!

  • レビュアー: さん
  • 本が好き!1級
星の海を駆ける: 新世代スペース・オペラ傑作選
 本書は、サブ・タイトル通り、新世代スペース・オペラの短編アンソロジーであります。
 スペオペと言えば一時期はSFの主流だったわけですが、あの脳天気(失礼)さもあって、徐々にメイン・ストリームからは外れてしまったのですが、ここに来て新たな切り口で復活している感もあり、本書ではまさにそのような『新世代』のスペオペを集めているのですね。

 そうしてもう一つ特筆すべき点は、「え? あの有名な長編を書いた作家の短編がこんなに沢山あるの?!」なのです。これは編集者の勝利ですね~。「これもそう? あ、こっちもか~」的にどんどんこういった作品が出てくるので、それら長編を読んできた私のようなSF読みにとっては非常にうれしい一冊になっているのです。
 それでは収録作品の一部をご紹介しましょう。

○ 禅と宇宙船修理技術/トバイアス・S・バッケル
 元々の身体を捨て、その精神を蟹型の整備形態に移した者が主人公です。このような身体改編の結果、ほぼ不死の筐体を得、ようやく終結した宇宙戦争でも宇宙船外に張り付いて活動することができていたのです。
 そこへやって来たのは人間の肉体を持った高位者です。その身体の損傷はひどく、かなりの手当をしなければ命が助からない状態でした。高位者は、主人公に対して極秘に身体を再生させるように命じました。この命令には逆らえないが……一方でこのような場合、セキュリティに通報しなければならない義務もあり、その板挟みになってしまうのです。
 これどっかで読んだな~と思っていたら、『巨大宇宙SF傑作選 黄金の人工太陽』というアンソロジーにも収録されておりました。

○ 課外活動/ユーン・ハ・リー
 おぉ! 『ナインフォックスの覚醒』等でこれまでには無かった宇宙戦闘を描き出したユーン・ハ・リーの短編だ! しかも一連のシリーズの主人公であるジェダオを登場させてきます。
 どうやら本作は一連のシリーズの前日譚に当たるようで、ジェダオはあるミッションを与えられ潜入捜査をするというお話。こういうのが読めてうれし~。

○ あなたが王だと思っていたすべての色/アーカディ・マーティン
 『帝国という名の記憶』シリーズで異色の王宮SFを書いてくれたアーカディアの短編は、やはり女王を戴くある国家を舞台にします。この国家には女王のクローンも生育されており、クローンが成人する時、女王と一騎打ちをし、生き残った方が女王になるという掟があったのです。
 この掟を嫌ったクローン体はある策を用いるのですが……。

○ ベラドンナの夜/アレステア・レナルズ
 う~、あの鈍器本三部作『啓示空間』シリーズなどを書いたアレステア・レナルズの短編ですよ~。たまらん。
 宇宙では20万年ごとに開かれる千夜祭が行われようとしており、幾万もの船舶が集結していました。この祭に参加したシャウラは、夜ごと自室の外にベラドンナの花が置かれていることに気付き、不審に思います。一体誰が花を置いているのか? その意味は?

○ 金属は暗闇の血のごとく/T・キングフィッシャー
 『パン焼き魔法のモーナ 街を救う』『死者を動かすもの』の作家さんの登場ですよ~。ここでは機械生命体の兄妹が描かれます。二人はある男に作られ、育てられていたのですが、男は年老い、病にも冒されたため、治療のためにもともといた地を離れざるを得なくなりました。男は兄妹に小惑星帯に潜み、生き抜くように言い残して去ったのです。
 兄妹は小惑星帯で有り余る金属を飽食していたのですが、ついある宇宙船の一部を喰ってしまったのです。すぐにその宇宙船を建造した邪悪な奴がやって来て二人は閉じ込められてしまい、また、兄がつけていた羽根を奪われてしまったのです。
 その邪悪な存在は兄妹にもっと強力な羽根を作るように命じ、二人を思い通りに使役するようになるのですが……。

○ 時空の一時的困惑/チャーリー・ジェーン・アンダーズ
 主人公は依頼があればなんでもやるという二人組です。彼らは金を貯め、いつかどこかでレストランを開くことが夢なのです。
 今回も『お広(ひろ)様』と呼ばれる、なんだかワカラン巨大醜悪生命体(?)と『お広様』をあがめ奉る宗教組織の本拠地に侵入し、ある物を奪おうとしたのですが、見つかってしまい『お広様』に追われる身に。しかも宇宙船の中には『お広様』の熱烈信奉者が宇宙に『お広様』を広めるために密航していたじゃないですか。どーすんのよ、これ!
 そこに新たな依頼が舞い込むのですが、これまたヤバそうな話なのです。
 ハハハと笑えるお馬鹿系SFで、私はこういうのは好みであります。どこかで読んだよな~と思っていたらこれも『巨大宇宙SF傑作選 黄金の人工太陽』というアンソロジーに収録されておりました。

○ 包嚢/アリエット・ド・ボダール
 なんと! あの『茶匠と探偵』の作家さんの短編ですよ~。
 全身を包み装着者に様々な情報を与える『包嚢』というものが一般化している世界が描かれます。主人公のキュイは『包嚢』を好きになれないのですが、つけないわけにはいかない場面もあります。今まさに実家からお呼びがかかり、必ず『包嚢』をつけて来いと言われます。
 そこにいたのは一組の夫婦なのですが、妻の方はものすごく濃度の濃い『包嚢』を身につけているのです。

○ 背教者たち/ラヴィ・ティドハー
 『ロボットの夢の都市』『完璧な夏の日』『黒き微睡みの囚人』、そしてあの『革命の倫敦』から始まる『ブックマン秘史』三部作などを書いた作家さんの登場ですよ!
 異端の教えを広めている宗教者が跋扈しているという情報に基づき派遣された裁定人を描くお話であります。

 その他にも日本で著名なSF作家さんの作品がある一方、まだ邦訳がない作家さんの作品も収録されています。
 私は上記の作品を読めただけで本書を読んだ価値があると喜んでおります。
 SF読みさんにはお勧めですよ!


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□□□     普通(1~2日あれば読める)/547ページ:2026/04/13
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  • 掲載日:2026/05/22
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