先日、クレモナ製のヴァイオリンを巡るミステリー
「ヴァイオリン職人と天才演奏家の秘密」を読んだばかりだったが、もう一冊ヴァイオリン絡みの小説を読んでみた。
作品は1991年に書かれ、ペレストロイカによりソビエト連邦が崩壊する直前の時代が舞台だ。
主人公はミュンヘンに住むアマチュアのオールドヴァイオリンの鑑定家だが、元はインターポール勤務の経験もある麻薬取締の警察官だった。彼がシチリアに住む有名なヴァイオリンコレクターの子爵の邸宅に招待されて弦楽四重奏を演奏していた頃、主人公のヴァイオリン鑑定の師匠でもあったオランダの有名な鑑定士が自宅で銃殺される事件があった。
オランダの鑑定士がロンドンのオークションで落札したヴァイオリンが鑑定士の偽の代理人によって盗まれていたが、そのヴァイオリンを主人公はシチリアの子爵の邸宅で見せられたのだった。そのヴァイオリンはネックの先の渦巻きの部分だけが高名なクレモナのヴァイオリン職人「グァルネリ・デル・ジェズ」の作品だった。
主人公が自宅に帰ると匿名の手紙が届いて、指示されたコインロッカーの中から別のオールドヴァイオリンが現れた。それは裏板と側板とネックがグァルネリ・デル・ジェズのもので、ネックの先の渦巻きは別のものと取り換えられていた。
主人公が探偵となってこのオールドヴァイオリンのばらばら事件の謎を解明していく。その過程で主人公はソ連のKGBの男や、シカゴの有名なヴァイオリン製作者で実は麻薬の密輸に絡んでいた男や、南米の麻薬王などと出会うことになる。
主人公の友人である子爵は師匠の殺害に関係しているのか、ばらばらになったヴァイオリンの出どころは何処なのか、いまだ不明のグァルネリ・デル・ジェズの表板は何処にあるのかなど、謎は多い。
ところで、主人公はシカゴへ行った際にゲオルク・ショルティの指揮でシカゴ交響楽団の演奏会を聴いている。20世紀後半にはゲオルク・ショルティ以外にも、ジョージ・セルやユージン・オーマンディーなど欧州生まれの名指揮者が米国のオーケストラの指揮をしていた。僕はジョージ・セル指揮クリーブランド交響楽団が演奏するシューマンの交響曲が好きでLPをよく聴いていたなあ。
オールドヴァイオリンの偽造と麻薬カルテルが絡んだダーティーな世界のお話だった。
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