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「ほんのひまつぶし」のつもりで手にとったものの、なんだかこれがつい夢中になって見てしまいました。

  • レビュアー: さん
  • 本が好き!1級
図説日本の名城
 「城の本」は毎年のように新しい本が出ていますし、趣向も様々に試みられています。本書では全90の城が取り上げられているとはいえ、最近は「百名城」「続百名城」なんていうのもあるそうですから、「少なめ」に見えてしまいますので、多くの城ファンからは「物足りない」なんて声も出てきそうです。
 また、姫路城のような有名な城でも4頁、半頁だけという城も少なくなく、130頁弱という頁数の中では、写真の総数も解説文の分量もごく限られています。刊行からすでに30年も経っていますので、城についてはその後の知見も進めば、整備状況も大きく変わっていることでしょう。ただ、それでも読んでいて、見ていてなんだか楽しいのです。

 子どもの頃、それこそ子ども向けの城の本を何度か目にしたことがあります。同じとは言えないにしても、その時のような楽しさに近いといえましょうか。
 子ども時分であれば、「いつか、あそこに行ってみたい」「この前はここに行ってみた」といった気分で眺めることができました。その後、長じてから「実際に行けたところ」はごく限られ、こういう本を手にしたら、むしろ「行けなかった」後悔を感じるのではないかとさえ、感じていました。かつてのように「あそこに行ってみたい」と無邪気に思うことはできないのですが、意外に無心にページをめくることができました。

 限られた紙幅で色々工夫していることもわかります。「写真」は現存12天守を含めて、見栄えのする復興天守や名櫓が中心ですが、写真も下から見上げるアングルがメインです。一見、典型的な写し方で単調にも見えるのですが、実は「実際に行った」時にみえてくる光景でしょう。臨場感といったらおおげさかもしれませんが、最も「城らしい」姿ではないでしょうか。
 全容を捉える空撮写真は意外に少ないのですが、単調になるのを避けるためか、時々、城と城下町を俯瞰した復原図も掲載されています。これはいつ見てても見飽きません。

 本書には序文がないのですが、見返しに取り上げた城を日本地図上にプロットしたものがあり、そこに「本書では、現存天守のある城、復原・外観復興天守のある城を中心に主要な近世期城郭90城を収録した」とありました。シンプルな編集方針です。
 模擬天守などについては、「存在しなかったものをつくってしまう」点に異論もあります。大洲城天守に見られるように、最近はコンクリート造よりも木造での復興も目立ちます。城ファンによっては櫓などよりも、土塁や縄張りへのこだわりを広言する人も少なくないです。それでも、このシンプルな「城らしさ」にこだわった入門書としては必要十分ではないでしょうか。

 ところで、こうした下から見上げる写真を見ていると、ある時期以降の天守を中心とした城は、「見られる・見せつける」ことを強く意識したものであることを感じます。城は本来闘うための要塞ではあるとはいえ、あるときから「見せつける」ことも闘うことになったのでしょう。
 現代人があえて模擬天守を造りたくなる気持ちもわかります。町おこしや観光といった理由付けもあるのでしょうか、「城があるならつくっちゃえ」という気持ちのほうが本音だったのではないでしょうか。天守の復原や模擬天守は高度成長期に1つのブームがあったそうですが、平成初期のバブル経済期にもブームになっていました。好景気はそんな気分を後押ししたのでしょう。模擬天守だっていいじゃないですか。行けなかった残念さも含めて、そんなこんなを楽しんでみました。

 さて、こういう本を読むときのお約束ですが、90城のうち行ったことがあるのを数えてみると、32城でした。やはり「実際に行けたところ」はごく限られていました。やっぱり、無念。

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  • 掲載日:2026/04/14
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