国立天文台の教授であり、五年にわたってすばる望遠鏡を持つ国立天文台ハワイ観測所の所長を務めた有本教授がその学者人生を振り返った著作です。
有本教授が天文学者になろうと思ったのは小学校五年生の時、近所のお兄さんが望遠鏡で月を見せてくれたのがきっかけだそうです。
そういえばわたしも同じくらいの年の頃に祖父が望遠鏡で月や土星の輪っかを見せてくれたことがあるが、天文に興味を持ったけど専門で勉強したいとまでにはならなかった。
天文学者を目指した有本少年は東北大学に入学、岡山天体観測所で天体観測の実務を習い、卒業後は東大からパリ・ムードン天文台、ハイデルベルク大学、ダーラム大学と海外を回って三鷹の国立天文台へ。
そして2012年春にハワイ観測所の所長として赴任する。
ちなみにハワイ観測所のスタッフになるとパスポートが緑の公用になるそうだ。
三十年ちょっとの学者人生を数ページで語っていかれるのだが、いろんな出来事があったのだろうな。
すばる望遠鏡はハワイのマウナケア山頂にあるが、年間を通じて晴天率が高いこと、大気の流れが安定していて乾燥しているため星の瞬きが少ないこと、地上の明かりが届きにくいことといった好条件の場所だそうです。
そのためマウナケア山頂にはケック望遠鏡やジェミニ望遠鏡、GFHTをはじめ13もの天文台が並んでおり、マウナケア天文台群を構成している。
天文台に行くには高地順応のための施設に一泊しなければならず、山頂は四千メートル以上の高地のため当然寒い。
そのためリモートで運営している天文台もあるそうですが、気軽に行ける場所ではないのはよくわかった。
すばる望遠鏡での観測も年間を通じて予約でいっぱい、ようやくとれた一夜にもし雨でも降れば一年後にまたゼロからやり直しという厳しい世界でもある。
有本教授は台長の立場での仕事の話や、すばる望遠鏡が観測した天体の話、ハワイでの生活拠点となったヒロの町の話、冬の星カノープスについてと様々なエピソードを織り交ぜながらハワイの生活について語っていきます。
興味深かったのは南半球では月の満ち欠けが反対側になること、そして赤道付近では左右ではなく上下で満ち欠けするという話だった。
そして面白かったのは天文学者はスーパームーンは嫌いだということだ。
国立天文台のホームページに「スーパームーンという言葉は定義がはっきりしていないので、国立天文台に次のスーパームーンはいつですかとお問合せされてもお答えできません」と言い切っているそうだ。
一年間の満月の中で月の見かけの大きさが最大になる日はいつかという問いにならすぐに答えが出るのだろう。
2017年に五年の任期を終えてハワイから日本へと帰国された有本教授だが、今はどこで星空を見上げているのだろう。
天文学者になりたいという少年の夢を見事に実現した教授の人生が詰まった本だった。
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