長編『札幌誕生』は、2023年7月から2025年1月にかけて
東京新聞ほか数紙に連載された、門井慶喜さんの新聞小説です。
もちろん、地元北海道新聞にも連載されていたようですから、
地元の読者は目が離せなかったのではないでしょうか。
北の大地に「北海道」と名をつけた人物として松浦武四郎の名をよく聞くが、
松浦が生きた幕末の頃、北海道の中心は箱館(のちに函館)にあった。
しかし、箱館はあまりにも南端。
あの大きな北海道の真ん中に街が欲しい。
それが札幌。先住民の言葉で「広い乾いた土地」。
明治維新後、その札幌の「開拓判官」となって札幌誕生に尽力した人物が、
この長編小説第一部「開拓判官」の主人公島義勇。
島は九州佐賀藩の出で、のちに「佐賀の乱」に組して斬首される人物。
「北海道開拓の父」と呼ばれる島がどのようにして札幌を作り上げていったか、
おそらく北海道の読者を夢中にさせたにい違いない。
第二部以降は、「札幌誕生」の苦心譚というよりも、
徐々に都市として拡大していくさまを4人の人物に光をあてながら書かれている。
第二部が札幌農学校の二期生だった内村鑑三、
第三部がアイヌの女性歌人、バチラー八重子、
第四部は作家有島武郎だが、有島が札幌近郊の大地主だったことは知らなかった。
第五部は氾濫多い石狩川の治水工事に尽力した岡崎文吉。
まさに都市が誕生するその時々に、それを前に進めた人物がいたことを
大河の流れのようにして描いた作品といえる。
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