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壊れたような言動の男。怖さとともに、少しだけ、分かる気がする表現。

  • レビュアー: さん
  • 本が好き!1級
遮光

著者のデビュー2作め、2004年の作品で野間文芸新人賞受賞作品だそう。中村文則は「掏摸」を読み、ダークだなあと感じた記憶がある。今作は大学生の男の内面、まさに"壊れて"暴走する。

男には虚言癖があった。恋人の美紀はアメリカに留学していて、いつも楽しそうに美紀の話を友人にしていた。その躁が入ったような話し方や時折り、ひどく暴力的になったりどこか行き過ぎるところ、言動が演技っぽい部分などを友人たちに怪訝に思われる場面も多かった。美紀は交通事故で死んでおり、男は美紀の一部を、持っていたー。

それっぽい、演技の積み重ね。どうしたらなじめるのか、分からない。主人公の周囲は女友達が風俗のアルバイトをしていたり、先輩が女を呼び出して襲おうと目論んだりと、猥雑な色合いが強い。徹底的に自分がない、虚言ばかりで、時にコントロールが効かないような男、その中の真実とは、をあぶり出している感覚。

荒っぽい、受け入れ難い状況。でもなぜかほんの少しだけ、理解できる気がしてしまう。それは若さでアイデンティティに悩んだ時、自分のキャラが分からないという壁にぶつかった時、少しでも良かれいう方向の演技をする行為、行動に思考が追いつかない、という現象にどこか納得できるからかもしれない。

荒くエグく暗い笑。主人公が信じられない。なにか尖ったものを突きつけられているような気分でもある。独特のテイストだ。
  • 掲載日:2026/05/04
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