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星落秋風五丈原
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「子供の出てくることが物語にねじの一ひねりを加えるとすると、子供が二人だったら、どうかね?」これが邦題の元になりました
 英BBCでは1971年から1978年にかけて、毎年クリスマスに怪奇小説の古典をドラマ化して放送していた。怪奇とキリスト生誕祭という、一見無関係の両者を結び付ける習慣が外国にはあるらしい。

 本編もその例に倣い、皆がゴーストストーリーを持ち寄る場面から始まる。そのなかの一人ダグラスが「とっておきのを知ってる」と言い出す。彼の家庭教師をしていた女性が亡くなる前に託したのだと言う。女性客達が「きゃー!ダグラスの密かな恋バナよ!」と色めき立つ中、わざわざダグラスがロンドンから取り寄せた原稿が読み上げられる。

 「何があっても自分を煩わせないでほしい」と頼まれて後見人をしている二人の子供達の面倒を見るためブライにやってきた家庭教師(Governess)が書き手だ。彼女の一人称であり、彼女が見た事聞いた事以外は書かれない。よって、読者は彼女視点で物事全体を見るため、彼女を信用しないと物語を前に進められない。ところが中盤から登場する二人の人物については、彼女以外しか目撃者がいない。屋敷には他に子供達の世話をするグロースさんという夫人がいるが、彼女には二人の人物が見えない。子供達も“見えている”とは言わない。しかし彼女によれば、子供達は“見えているのに見えないふりをしている”のだと言う。こんな曖昧な状況をクリアにするには、外界から人を呼び、客観的な判断を下してもらうのが一番なのに、雇われる時の最初の縛りが邪魔をする。袋小路に陥った彼女は自分なりに事態を収拾しようとするが、彼女の決断や行動を客観的に判断する人が誰もいない。映像作品ではとあるモノが映ってしまうが小説は彼女の記述のみだ。さあ、あなたは彼女の言う事は本当に全て信用できるか?ぐらぐらした土台の上に立つゆらゆらした怪異譚。

げに恐ろしきは女性の洞察力!の「古衣装の物語The Romance of Certain Old Clothes」「幽霊貸家The Ghostly Rental」「オーエン・ウィングレイヴOwen Wingrave」「本当の正しい事The Real Right Thing 」収録。

 2009年に英国ガーディアン紙が発表した、「英ガーディアン紙が選ぶ必読小説1000冊」選出。

ヘンリー・ジェームズ作品
ワシントン・スクエア
大使たち〈上〉
大使たち〈下〉
黄金の盃
ある婦人の肖像
アスパンの恋文
ヘンリー・ジェイムズ作品集 (2) ポイントンの蒐集品 メイジーの知ったこと 檻の中
友だちの友だち (バベルの図書館)
ロデリック・ハドソン
聖なる泉
ロンドン生活 他
ヘンリー・ジェイムズ作品集 (7) 密林の獣 荒涼のベンチ
ボストンの人々
アメリカ人
    • BBC版ねじの回転
    • デボラ・カー主演映画ねじの回転
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星落秋風五丈原
星落秋風五丈原 さん本が好き!1級(書評数:2321 件)

2005年より書評業。外国人向け情報誌の編集&翻訳、論文添削をしています。生きていく上で大切なことを教えてくれた本、懐かしい思い出と共にある本、これからも様々な本と出会えればと思います。

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この書評へのコメント

  1. あられ2020-02-07 18:41

    はじめまして。いつも楽しく拝見しています。サトクリフの書評もとても楽しく読んでいます。サトクリフ、積読しているので・・。ねじの回転、BBCがドラマ化しているとは知りませんでした。とても面白そうです。

  2. 星落秋風五丈原2020-02-07 19:28

    あられさん、はじめまして。サトクリフは昔勢いで作品を全部読みました。おかげで作者の好きなタイプというのが段々わかってきました。ねじの回転は映画も有名ですね。そして必ず家庭教師が美人!(笑)

  3. No Image

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