DBさん
レビュアー:
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愛がすべての原動力の話
上下巻通しての書評です。
久しぶりの再読です。
最初に読んだのは、たぶんジェーン・エアが少し年上に感じられるくらいの年齢だったと思う。
当時としては時代背景や恋愛への細かい心理変化などわかるはずもなく。
ただ家庭教師の若い女性とその主人の恋愛にドラマチックなシーンとロマンチックさが同居した小説という印象だった。
当時としては美しくないヒロインの自立した物語ということで時代を先駆けていたそうだ。
確かに嵐が丘のキャサリンはブロンド美人だったしね。
ロチェスター氏と同じくらいの年齢となって読み返し、いろいろと違った意味で楽しめる作品となっていた。
まだ十八歳のジェーン話は、彼女が十歳の時の追憶から始まります。
両親を亡くし、引き取って可愛がってくれた叔父も病死して血のつながらない叔母のもとで三人の従兄弟と暮らしていた。
理由もなく折檻を受け、追い出されるかのように寄宿学校へと送られる。
そこでも慈善学校を私物化した学長の横暴さで病死する子供が多発する。
ここで親友というべきヘレンを亡くしたジェーンは、自立した女性を目指して努力します。
その結果成績も優秀で教師を務めるまでになり、師と仰いでいた女性の結婚を機に外の世界へ出る決意をする。
まあこのあたりは悲惨な環境で自己防衛のために自立するようになった女性の生い立ちを振り返るというような雰囲気だったかな。
そしてやってきたのはソーンフィールド邸というマナーハウスで、フランス出身の少女の家庭教師として新たな生活を始めます。
マナーハウスの主人はエドワード・ロチェスター、やや皮肉的な部分はあるがジェーンの目には男らしく立派な人物に写ったようだ。
どこか達観したような一人称の語りで進んでいくのだが、激しい恋とそれを抑えようとする気持ちに揺れるのがジェーンらしい。
同じ身分の女性に気があるふりをしたり、ジプシーの真似をしてまでジェーンの心を探ろうとする男もそうとう舞い上がってると思うけどね。
身分違いという障壁を打ち破ってでも結ばれようとした二人の前に、新たな大きい障害が立ちふさがります。
ソーンフィールドを身一つで逃げ出したどり着いたのは、沼地の丘に建つムーア・ハウスと呼ばれる一軒の古い家だった。
父親が亡くなり家を継いだ牧師の兄と、働く先から実家に戻っていた妹二人が暖炉の周りに集うような家だ。
餓死寸前で助けられたジェーンは牧師のセント・ジョンから農家の子供たちのための学校の先生となる。
これを富裕層の家庭教師に比べて卑しい仕事だと言い切ってしまうところに身分社会の冷徹なルールを感じてしまった。
縁は不思議なもので、実は従兄弟だとわかったセント・ジョンとその妹たちとの関係は出会った時と変わらず続く。
妹たちとは仲良く、兄とは距離を置いた関係だった。
近くで過ごすうちに、セント・ジョンが地元の裕福な家庭の娘に激しい情熱を抱いていることがわかってくる。
だが牧師として新天地を目指しているセント・ジョンは、情熱を理性で押さえつけることに成功していた。
これこそが宗教の求める自己犠牲だとばかりの振る舞いだが、とばっちりはジェーンにまで及んでいた。
ジェーンの働きぶりに新天地へ布教活動するためのパートナーとして、自分と結婚して共に来るように求めたのだ。
美しいギリシャの彫像のようでありながら、自分のことを女として愛することは決してない男。
いろんな障害が間に立ちふさがっているが、間違いなく自分のことを愛してくれる男。
比べてしまえばジェーンがどちらを選ぶかは自明の理だろう。
突き詰めてしまえばただのラブロマンスだった。
久しぶりの再読です。
最初に読んだのは、たぶんジェーン・エアが少し年上に感じられるくらいの年齢だったと思う。
当時としては時代背景や恋愛への細かい心理変化などわかるはずもなく。
ただ家庭教師の若い女性とその主人の恋愛にドラマチックなシーンとロマンチックさが同居した小説という印象だった。
当時としては美しくないヒロインの自立した物語ということで時代を先駆けていたそうだ。
確かに嵐が丘のキャサリンはブロンド美人だったしね。
ロチェスター氏と同じくらいの年齢となって読み返し、いろいろと違った意味で楽しめる作品となっていた。
まだ十八歳のジェーン話は、彼女が十歳の時の追憶から始まります。
両親を亡くし、引き取って可愛がってくれた叔父も病死して血のつながらない叔母のもとで三人の従兄弟と暮らしていた。
理由もなく折檻を受け、追い出されるかのように寄宿学校へと送られる。
そこでも慈善学校を私物化した学長の横暴さで病死する子供が多発する。
ここで親友というべきヘレンを亡くしたジェーンは、自立した女性を目指して努力します。
その結果成績も優秀で教師を務めるまでになり、師と仰いでいた女性の結婚を機に外の世界へ出る決意をする。
まあこのあたりは悲惨な環境で自己防衛のために自立するようになった女性の生い立ちを振り返るというような雰囲気だったかな。
そしてやってきたのはソーンフィールド邸というマナーハウスで、フランス出身の少女の家庭教師として新たな生活を始めます。
マナーハウスの主人はエドワード・ロチェスター、やや皮肉的な部分はあるがジェーンの目には男らしく立派な人物に写ったようだ。
どこか達観したような一人称の語りで進んでいくのだが、激しい恋とそれを抑えようとする気持ちに揺れるのがジェーンらしい。
同じ身分の女性に気があるふりをしたり、ジプシーの真似をしてまでジェーンの心を探ろうとする男もそうとう舞い上がってると思うけどね。
身分違いという障壁を打ち破ってでも結ばれようとした二人の前に、新たな大きい障害が立ちふさがります。
ソーンフィールドを身一つで逃げ出したどり着いたのは、沼地の丘に建つムーア・ハウスと呼ばれる一軒の古い家だった。
父親が亡くなり家を継いだ牧師の兄と、働く先から実家に戻っていた妹二人が暖炉の周りに集うような家だ。
餓死寸前で助けられたジェーンは牧師のセント・ジョンから農家の子供たちのための学校の先生となる。
これを富裕層の家庭教師に比べて卑しい仕事だと言い切ってしまうところに身分社会の冷徹なルールを感じてしまった。
縁は不思議なもので、実は従兄弟だとわかったセント・ジョンとその妹たちとの関係は出会った時と変わらず続く。
妹たちとは仲良く、兄とは距離を置いた関係だった。
近くで過ごすうちに、セント・ジョンが地元の裕福な家庭の娘に激しい情熱を抱いていることがわかってくる。
だが牧師として新天地を目指しているセント・ジョンは、情熱を理性で押さえつけることに成功していた。
これこそが宗教の求める自己犠牲だとばかりの振る舞いだが、とばっちりはジェーンにまで及んでいた。
ジェーンの働きぶりに新天地へ布教活動するためのパートナーとして、自分と結婚して共に来るように求めたのだ。
美しいギリシャの彫像のようでありながら、自分のことを女として愛することは決してない男。
いろんな障害が間に立ちふさがっているが、間違いなく自分のことを愛してくれる男。
比べてしまえばジェーンがどちらを選ぶかは自明の理だろう。
突き詰めてしまえばただのラブロマンスだった。
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好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。
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- 出版社:新潮社
- ページ数:428
- ISBN:9784102098011
- 発売日:1986年12月01日
- 価格:660円
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