紅い芥子粒さん
レビュアー:
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著者の菌類への愛とユーモアあふれる文章にひきつけられて読んだ。恐いと思った。カビもキノコも。菌類、おそるべし。
柳田国男の「遠野物語」にザシキワラシの話がある。
そのうちのひとつが、こんな話だった。
ある長者の家から、ザシキワラシが出ていった。
「いよいよあの家もおしまいか……」
村人たちは、二人寄れば、ひそひそうわさしあった。
ほどなくして、長者の家の者が、全滅するという大惨事が起きた。
下男下女もふくめて二十幾人、一人残らず……
ではなくて、七歳の女の子ひとりを残して。
原因は、キノコ中毒。
女の子だけが、食事時、外へ遊びに行っていて、難を逃れたのだった。
毒キノコ。おそるべき破壊力。
いっぺんに二十幾人の命を奪うとは。
この話を読んでから、キノコのことを知りたいと思っていた。
そこで図書館から借りてきたのが、この本。
ニコラス・マネー著「ふしぎな生きものカビ・キノコ」
菌学専門の植物学者が書いた一般向けの科学の本だ。
第一話から第九話まであり、第八話が「毒キノコあれこれーー破滅の天使」
キノコの毒は多くが遅効性で、食べてすぐに「ゲェッ」となるものではないらしい。
例えばドクツルタケ。
食べてからしばらくは、とても気持ちよくなる。
八時間から二日後に激しい腹痛と吐き気。
いったんは症状がやわらぐが、それもつかの間。
肝臓の障害が始まり、死に至る。
キノコが持っているアマトキシン類が、腸で吸収されて肝臓に老廃物として貯まるのだそうだ。
見た目がきれいなタマゴテングタケにもアマトキシン類がある。
遠野物語の長者一家が食べたキノコの種類はわからないが、アマトキシン中毒なら、一家全滅もうなずける。
細かく刻んで雑炊にして食べたのだ、きっと。
その日の夜か翌朝ぐらいから、腹痛や嘔吐にのたうち回る者が出てきて……
この長者一家の滅亡には、予兆のような話がある。
あるとき、下男がまぐさをかきまわしていたら、つぎからつぎへと蛇が出てきた。
下男は面白半分に、ことごとく殺して埋めて、蛇塚を築いたという。
もしかしたら、蛇塚の蛇の死体からたくさんのキノコが生えたのかもしれない。
見慣れないが、とてもおいしそうなキノコが……
ひとはそれを蛇の祟りというが。
第一話「臭いスッポンタケと冷たいキノコ」によると、
森の土の中には、網の目のように菌糸がめぐっていて、朽木や動物の死体から栄養を吸い取り、キノコが生えるのだという。
キノコ(子実体)は、菌という生き物からすれば氷山の一角で、胞子をつくりそれを飛ばすための道具に過ぎないのだそうだ。
わが家の庭にも長雨のあと、にょきにょきキノコが生えてきてびっくりすることがあるが、庭の土の中にも菌糸がびっしりということなのだ。
中学理科程度の科学知識しかないわたしには、ちょっと難しい本だった。
最後まで読み通せたのは、著者の菌類への愛とユーモアにあふれた文章にひきつけられたから。
内容の理解と、読みやすさは別なんです。
読後の感想はというと、恐かった。カビもキノコも。菌類って怖ろしい。
土いじりをするときは、ぜったい手袋をするわ。
皮膚の小さな傷から何かの菌が入って、どんな感染症になるかわからないもの。
でも、いちばん愚かで恐ろしいのは、やはり人間。
カビやキノコの毒から生物化学兵器が作られ、じっさいに使用されたこともあるというから。
そのうちのひとつが、こんな話だった。
ある長者の家から、ザシキワラシが出ていった。
「いよいよあの家もおしまいか……」
村人たちは、二人寄れば、ひそひそうわさしあった。
ほどなくして、長者の家の者が、全滅するという大惨事が起きた。
下男下女もふくめて二十幾人、一人残らず……
ではなくて、七歳の女の子ひとりを残して。
原因は、キノコ中毒。
女の子だけが、食事時、外へ遊びに行っていて、難を逃れたのだった。
毒キノコ。おそるべき破壊力。
いっぺんに二十幾人の命を奪うとは。
この話を読んでから、キノコのことを知りたいと思っていた。
そこで図書館から借りてきたのが、この本。
ニコラス・マネー著「ふしぎな生きものカビ・キノコ」
菌学専門の植物学者が書いた一般向けの科学の本だ。
第一話から第九話まであり、第八話が「毒キノコあれこれーー破滅の天使」
キノコの毒は多くが遅効性で、食べてすぐに「ゲェッ」となるものではないらしい。
例えばドクツルタケ。
食べてからしばらくは、とても気持ちよくなる。
八時間から二日後に激しい腹痛と吐き気。
いったんは症状がやわらぐが、それもつかの間。
肝臓の障害が始まり、死に至る。
キノコが持っているアマトキシン類が、腸で吸収されて肝臓に老廃物として貯まるのだそうだ。
見た目がきれいなタマゴテングタケにもアマトキシン類がある。
遠野物語の長者一家が食べたキノコの種類はわからないが、アマトキシン中毒なら、一家全滅もうなずける。
細かく刻んで雑炊にして食べたのだ、きっと。
その日の夜か翌朝ぐらいから、腹痛や嘔吐にのたうち回る者が出てきて……
この長者一家の滅亡には、予兆のような話がある。
あるとき、下男がまぐさをかきまわしていたら、つぎからつぎへと蛇が出てきた。
下男は面白半分に、ことごとく殺して埋めて、蛇塚を築いたという。
もしかしたら、蛇塚の蛇の死体からたくさんのキノコが生えたのかもしれない。
見慣れないが、とてもおいしそうなキノコが……
ひとはそれを蛇の祟りというが。
第一話「臭いスッポンタケと冷たいキノコ」によると、
森の土の中には、網の目のように菌糸がめぐっていて、朽木や動物の死体から栄養を吸い取り、キノコが生えるのだという。
キノコ(子実体)は、菌という生き物からすれば氷山の一角で、胞子をつくりそれを飛ばすための道具に過ぎないのだそうだ。
わが家の庭にも長雨のあと、にょきにょきキノコが生えてきてびっくりすることがあるが、庭の土の中にも菌糸がびっしりということなのだ。
中学理科程度の科学知識しかないわたしには、ちょっと難しい本だった。
最後まで読み通せたのは、著者の菌類への愛とユーモアにあふれた文章にひきつけられたから。
内容の理解と、読みやすさは別なんです。
読後の感想はというと、恐かった。カビもキノコも。菌類って怖ろしい。
土いじりをするときは、ぜったい手袋をするわ。
皮膚の小さな傷から何かの菌が入って、どんな感染症になるかわからないもの。
でも、いちばん愚かで恐ろしいのは、やはり人間。
カビやキノコの毒から生物化学兵器が作られ、じっさいに使用されたこともあるというから。
掲載日:
書評掲載URL : http://blog.livedoor.jp/aotuka202
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読書は、登山のようなものだと思っています。読み終わるまでが上り、考えて感想や書評を書き終えるまでが下り。頂上からどんな景色が見られるか、ワクワクしながら読書という登山を楽しんでいます。
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- 出版社:築地書館
- ページ数:307
- ISBN:9784806713579
- 発売日:2007年12月01日
- 価格:2940円
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