Yasuhiroさん
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林真理子版「源氏物語」を読む前におさらい。研究者の山本淳子先生との対談の形で「本当の面白さ」を要領よく説明されています。
いきなりですが、「源氏物語」です。
古文授業のマスト・フレーズ、理系には蕁麻疹の
わたくし、受験勉強の参考書やガイド本等々でその内容は大体承知しているのですが、実は一回も完読したことがありません。
原典(と言っても紫式部の直筆原稿など残っていないのですが)はムリムリ、さりとて現代語訳も与謝野晶子大先生に始まり、谷崎潤一郎、田辺聖子、円地文子、橋本治、瀬戸内寂聴、今泉忠義等々、錚々たる先生方の名前を見ただけで怖気づいてしまいます。
そこで本サイトで古典レビューといえばこの人、いけぴんさん!
以前から多くの源氏物語関係のレビューをされていますが、最近は林真理子さんの「小説源氏物語」(文庫版全三冊)を読まれていました。
で、そのレビューを拝見し、、、大変面白そうであるし、、、
わたしも三冊ならとりあえず読める!(そこかよ)
と思い立ったのでした。
そこでまずおさらいとして読んだのがこの本。その林真理子さんが一から勉強しなおすべく、源氏物語研究家の山本淳子先生にその魅力を伺った対談集で、源氏物語の内容、成立過程やその後の流布、影響、謎の多い紫式部の人物像等について要領よくまとめられています。
まず山本先生が強調されているのは、「物語」という形式は当時は
勝手な想像ですが、現代で言えば、漫画に市民権を与え世界に広める原動力となった手塚治虫や萩尾望都等の漫画家が彼女に比肩しうるでしょうか。(竹洗会からのブーイングが聞こえる!ちなみに竹洗会は橋本治推し)
そういう意味では、現代語訳で圧倒的な発行部数を誇るのが大和和紀さんの「あさきゆめみし」(1800万部、Wikipediaより)なのも(この千年の流布の仕方に「絵巻」が大きな役割を果たしたことも加味すれば)、現代における読まれ方として正しいのかもしれません。山本先生は
一方、林真理子さんが気になるのはやはり物語を彩る数多のヒロイン、そして小説の構造です。同じ主題を繰り返しながら壮大な交響曲へともっていくその手法に感嘆されていますが、その芯をなすのが紫の上であることでお二人の意見は一致。
そして物語の主題を担っていたのもミセス・パープル。
それ以外の女性では、
その他にも山本先生の該博な知識で読みどころ満載です。とくに、先生は
もちろんあの人、犬猿の仲と言われた清少納言の話も出てきます。おもしろかったのは、この二人を英王室のスポークスマンに例えての比較。
清少納言が仕えた中宮定子が故ダイアナ妃、紫式部が仕える彰子が現カミーラ妃で、ダイアナ人気が未だに高過ぎてカミーラさんが不人気なのと同様、故定子の人気が衰えないので彰子の影が薄い。そのことがスポークスマン・紫式部は面白くなかったのだ、というご意見には納得!
ちなみにこの中宮定子が
と、冒頭に回帰したところでお開きとさせていただき、林版源氏物語を読んでいきたいと思います。駄文にお付き合いありがとうございました。
古文授業のマスト・フレーズ、理系には蕁麻疹の
いづれの御時にか女御更衣あまた候ひ給ひけるなかにです。
わたくし、受験勉強の参考書やガイド本等々でその内容は大体承知しているのですが、実は一回も完読したことがありません。
原典(と言っても紫式部の直筆原稿など残っていないのですが)はムリムリ、さりとて現代語訳も与謝野晶子大先生に始まり、谷崎潤一郎、田辺聖子、円地文子、橋本治、瀬戸内寂聴、今泉忠義等々、錚々たる先生方の名前を見ただけで怖気づいてしまいます。
そこで本サイトで古典レビューといえばこの人、いけぴんさん!
以前から多くの源氏物語関係のレビューをされていますが、最近は林真理子さんの「小説源氏物語」(文庫版全三冊)を読まれていました。
で、そのレビューを拝見し、、、大変面白そうであるし、、、
わたしも三冊ならとりあえず読める!(そこかよ)
と思い立ったのでした。
そこでまずおさらいとして読んだのがこの本。その林真理子さんが一から勉強しなおすべく、源氏物語研究家の山本淳子先生にその魅力を伺った対談集で、源氏物語の内容、成立過程やその後の流布、影響、謎の多い紫式部の人物像等について要領よくまとめられています。
まず山本先生が強調されているのは、「物語」という形式は当時は
サブカルチャーであったことです。皇族貴族男子の学ぶべき格式の高い文学は漢詩や和歌であり、物語は
女こどもの暇つぶしのための娯楽であったのです。それを時の帝や藤原道長などに読ませるほどにした紫式部の功績は大きかった。
勝手な想像ですが、現代で言えば、漫画に市民権を与え世界に広める原動力となった手塚治虫や萩尾望都等の漫画家が彼女に比肩しうるでしょうか。(竹洗会からのブーイングが聞こえる!ちなみに竹洗会は橋本治推し)
そういう意味では、現代語訳で圧倒的な発行部数を誇るのが大和和紀さんの「あさきゆめみし」(1800万部、Wikipediaより)なのも(この千年の流布の仕方に「絵巻」が大きな役割を果たしたことも加味すれば)、現代における読まれ方として正しいのかもしれません。山本先生は
頭中将の髪の毛がなぜか金髪と苦笑されておられますが。
一方、林真理子さんが気になるのはやはり物語を彩る数多のヒロイン、そして小説の構造です。同じ主題を繰り返しながら壮大な交響曲へともっていくその手法に感嘆されていますが、その芯をなすのが紫の上であることでお二人の意見は一致。
さらに彼女(紫式部)のすごいところは、物語の中心に紫の上という太い線を置いたところです。いろんな女の人といろんなことをするけれども、物語には一本の大きな幹がある。「源氏物語」は、紫の上の成長の歴史とともにストーリーが進んでいくのです。
そして物語の主題を担っていたのもミセス・パープル。
光源氏という男性の庇護を受け、でもだからこそいろいろな男女のありかたを考えさせられてて、傷つきもし、最後は「女ほどままならず哀れな存在はない」と嘆いて死ぬ。しかし、彼女の人生が敗北だったかというと、そうではない。
それ以外の女性では、
生霊7年、死霊で20年の六条御息所、
おじさんはもうダメと気づかせる重要な役割を担っている玉鬘あたりに興味を持たれたようです。事実、林真理子さんは前半二巻の題名を「六条御息所 源氏がたり」にされました。
その他にも山本先生の該博な知識で読みどころ満載です。とくに、先生は
「源氏物語」を和歌や日記、同時代の文学から読み取るという新しい視点の研究で注目を集めておられるだけあって、同時代の他の女流作家の作品との関連に関する話題が豊富でした。
もちろんあの人、犬猿の仲と言われた清少納言の話も出てきます。おもしろかったのは、この二人を英王室のスポークスマンに例えての比較。
清少納言が仕えた中宮定子が故ダイアナ妃、紫式部が仕える彰子が現カミーラ妃で、ダイアナ人気が未だに高過ぎてカミーラさんが不人気なのと同様、故定子の人気が衰えないので彰子の影が薄い。そのことがスポークスマン・紫式部は面白くなかったのだ、というご意見には納得!
ちなみにこの中宮定子が
いづれの御時にか女御更衣あまた候ひ給ひける中に、いとやむごとなき際にはあらぬが、すぐれて時めき給ふ桐壺更衣のモデルであったというのが、山本先生のご意見です。
と、冒頭に回帰したところでお開きとさせていただき、林版源氏物語を読んでいきたいと思います。駄文にお付き合いありがとうございました。
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馬鹿馬鹿しくなったので退会しました。2021/10/8
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