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ぽんきち
レビュアー:
立ち止まって考える、人生を形作る要素あれこれ
哲学者・三木清による哲学エッセイ。
「人生論」ではなく、「人生論ノート」であるところがポイントだろう。
大上段に振りかぶった一大論文ではなく、死、幸福、懐疑、習慣、虚栄といったテーマに関して、数ページずつの考察が並ぶ。各項目は断片的ないくつかの段落で論じられる。
雑誌「文学界」に断続的に連載された22編に、三木が大学生時代に執筆した1編(「個性について」)を加え、総ページ数も150ページ弱。一見、取っ付きやすく見えるのだが、さすがに歯ごたえがあり、読み飛ばせない。

例えば「感傷について」の章。
・・・私は動きながら喜ぶことができる。喜びは私の運動を活潑にしさえするであろう。私は動きながら怒ることができる。怒は私の運動を激烈にしさえするであろう。しかるに感傷の場合、私は立ち停まる、少くとも静止に近い状態が私に必要であるように思われる。

使っている言葉は比較的平易であるが、己に引き比べ、内省を誘うような、思索の入口となるような文章である。一度読んだら終わりというわけではなく、折に触れて読み返し、その時々の人生のさまざまな局面を振り返るのに適した論文集と言えるだろう。

孤独というのは独居のことではない。独居は孤独の一つの条件に過ぎず、しかもその外的な条件である。むしろひとは孤独を逃れるために独居しさえするのである。隠遁者というものはしばしばかような人である。<孤独について>


旅は人生の姿である。旅において我々は日常的なものから離れ、そして純粋に観想的になることによって、平生は何か自明のもの、既知のものの如く前提されていた人生に対して新たな感情を持つのである。旅は我々に人生を味わさせる。<旅について>

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ぽんきち
ぽんきち さん本が好き!免許皆伝(書評数:1826 件)

分子生物学・生化学周辺の実務翻訳をしています。

本の大海を漂流中。
日々是好日。どんな本との出会いも素敵だ。

あちらこちらとつまみ食いの読書ですが、点が線に、線が面になっていくといいなと思っています。

「実感」を求めて読書しているように思います。

赤柴♀(もも)は3代目。
この夏、有精卵からヒヨコ4羽を孵化させました。そろそろ大雛かな。♂x2、♀x2。ニワトリは割と人に懐くものらしいですが、今のところ、懐く気配はありませんw

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