著者によっては略歴に生年を載せない人もいるが、
くどうれいんさんはちゃんと「1994年生まれ」と記載されている。
つまり、このエッセイ集『三十路の逆立ち』が出版された2026年は
30歳を少し越えたところだ。
ちなみに「三十路(みそじ)」とは30歳のことをいう。
表題となったエッセイでは、友人の部屋で久しぶりに逆立ちにいどむ姿が描かれている。
逆立ちしながら子どもの頃祖父母の家で逆立ちをして遊んでいたことを思い出し、
「三十路のわたしは(略)からだもずっと重くなってしまったが、
八歳のわたしにはまあまあ胸の張れる人生のような気」がしている。
くどうさんのエッセイの魅力は、こういった少しばかりの明るさといっていい。
その明るさが読者にはたまらない。
このエッセイに収められた23篇に共通しているのが、
もしかしたら盛岡の街なかで出会いそうな三十代の女性のありふれた時間だろう。
時に悩み、時に発奮し、時に落ち込み、時に目を輝かす。
つまりは、仲のいい友達の話に引き込まれていく感じ。
私が気に入ったのは「もぐら家族」というエッセイ。
両親と弟、それにくどうさんの家族四人の金沢への旅行のようすを描いたもので、
しみじみしたり笑ったり、ほっこりとはこういうことをいうのだろう。
「もぐら家族」とは長野の善光寺にある「お戒壇巡り」という暗闇の通路を歩くさまを「もぐら」と称したもので、
そういえば私も両親を連れて「もぐら」になったことを思い出した。
このエッセイの最後、「また行けばいい。どこにでも、何度でも」と書く
くどうさんはやっぱり明るい。
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