アストロファージと名付けられた異星微生物が太陽のエネルギーを奪い取られた結果、太陽の出力エネルギーは減少の一途を辿り、地球の気温がそれにつれて降下していく。10~15℃の気温低下がもたらすのは危機的な食糧不足だ。ある科学者の予測では全世界の人口の半分が餓死するという。ただし、生き残った人々が友好的で一致団結して食糧難と対峙すればと言う条件付きだ。人類の歴史上の様々な出来事はすべて食料確保に起因している。狩猟、農業、牧畜、輸送、貯蔵、分配・・・そして・・・戦争。気温低下による食糧不足で起こりうるのは、食料の奪い合いだ。半分の生き残りは絵空事に過ぎない。
絶望的な未来を救うべくグレースはアストロファージの秘密解明に挑む。相棒は地球と同様の危機に見舞われている惑星エリディオンからやってきたロッキーだ。
サイエンティストのグレースとエンジニアのロッキー。互いの言語や価値観を時間かけて共有し、最高のコンビとなって問題解決に取り組む。上巻と同様、物理学、宇宙工学、エンジニアリングの用語がそこかしこに散りばめられ、ロジカルかつサイエンティフィックにアストロファージの正体に迫る。作業の合間に交わされる二人のちょっとした会話が深い。異世界で互いに十分に教養を積んだ者同士の会話である。
(ロッキー)『どうしてぼくらはおなじスピードで考える、質問?』
(グレース)『ぼくらはおなじスピードで考えてはいない。きみはぼくよりずっと速く計算できる。それにきみはなんでも完璧に覚えている。・・・』
(ロッキー)『計算は考えることではない。計算は手続き(プロシージャ)。記憶は考えることではない。記憶は貯蔵容量(ストレージ)。考えるとは考えること。問題、解決。きみとぼくはおなじスピードで考える。どうして、質問?』
そして、二人の会話はこの問題に対してある答えに辿り着く。このキャッチボールが読んでいてとても心地よい。ストーリーには直接関係ないが、このシーンが私は好きだ。
アストロファージを退治する秘密をついに解明し、二人はその成果をもってそれぞれの故郷に帰っていく。しかし、それまで気が付かなかった最大のリスクをグレースはたった一人で知ることとなる。別れたロッキーはこのリスクに気付いているのか?
数々のピンチを乗り越えて物語は大団円に辿り着く。それは、おそらく多くの読者が望んでいた結末ではなく・・・。
映画が先か、小説が先か・・・悩ましい。何も知識を持たず本を手にした方が良いのかもしれない。映画→小説→映画と進んで、視覚的に、そしてストーリーの細部を楽しむか・・・。
この物語は本当に悩ましい。
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