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DBさん
DB
レビュアー:
チェロの響きが聞こえる本
無伴奏チェロ組曲の第一組曲をはじめて聞いたのはいつだろう。
その深い音の流れに聞きほれたが、わたしが持っているCDはミッシャ・マイスキーのもので第一と第三、第五組曲が収録されたものです。
残念ながら著者おすすめのCDリストには入っていないけど、第二や第四も聴いてみたくて動画を検索したらカザルスの演奏したものがすべて聴けました。
確かにカザルスとマイスキーは曲の雰囲気が全然違う。

本作では第一から第六組曲のそれぞれの楽章をタイトルに、偉大なるバッハと無伴奏チェロ組曲を再発見したチェリストのカザルスについて語っていきます。
バッハといえば音楽室に飾ってあるような白い鬘姿のイメージですが、1685年にドイツのアイゼナハという小さな町で代々音楽家の家系に生まれたそうです。
わずか十歳で父を亡くしオルガニストとなっていた兄に引き取られたバッハは音楽家の道を歩み続ける。

バッハの職歴や結婚、作曲についてその生涯を追っていきます。
バッハの生涯を丹念に追っていくので、当時のドイツの宮廷や音楽家たちがどうやって生活していたのかが伝わってくる。
面白かったのは「ブランデンブルク協奏曲」でバッハは様々な楽器の組み合わせで曲を書いているが、ヴィオラ・ダ・ガンバよりもチェロに難易度が高いパートを与えているそうです。
これは当時の雇い主であったケーテンのレオポルド候がヴィオラ・ダ・ガンバを演奏していたためだとか。
この経験がバッハにチェロの独奏曲を書かせたのだろうと考察している。

チェロ組曲のほかにもバッハが作曲した『ヨハネ受難曲』について触れられている。
曲としては知っていても歌詞についてはあまり考えたことなかったが、著者は反ユダヤ主義的な歌詞に不安を感じたそうだ。
歴史や音楽をそういう視点でとらえたことがなかったので考えさせられた。

カザルスがバッハのチェロ組曲を演奏するようになるまで、チェロ組曲は練習曲としての扱いだったそうだ。
1876年にスペインのカタルーニャに生まれたカザルスはデビューして世界を飛び回るチェリストになっていった。
スペイン内戦やナチスが出てきて歴史を感じる部分もあるが、バッハとカザルスの生涯を交互に語ることで二百年の時を超えて二人が結びついているのを感じることができた。

著者もバッハへの理解をより深めようとチェロを習ってみたり、合唱で参加してみたり、ギターでバッハを弾いてみたりと自分なりの方法でアプローチしています。
じっくりとバッハを聴きながら読みたい本でした。
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DB
DB さん本が好き!1級(書評数:2035 件)

好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。

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この書評へのコメント

  1. あかつき2021-05-21 21:24

    バッハはネ申。

  2. DB2021-05-21 21:46

    間違いない(^^)/

  3. No Image

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