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モーツァルトとベートーヴェン(生前は「ベートホーフェン」と呼ばれた)は年の差わずか14歳。でも、前者は身分の低い「楽士」、後者は「偉大な芸術家」として死を迎えます。後者の実像、なるほど納得です。

  • レビュアー: さん
  • 本が好き!1級
  • ベートーヴェンとベートホーフェン―神話の終り
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  • 出版社:七つ森書館
ベートーヴェンとベートホーフェン―神話の終り
第1章 盛名
第2章 有名人の症状
第3章 ゲーテとベートホーフェン
第4章 女たちの影
第5章 ”不滅の恋人”
第6章 愚行
第7章 革命的な音楽家
第8章 栄冠
第9章 終章・フェニックスの歌


ベートーヴェンの人生、歴史の変動と連動していたということに、納得できます。
まず、ボンからウィーンに留学したまま、ずっとウィーンに留まった件。
それは、故郷・ボンがフランス軍に占領され、留学費用を出したケルン選帝侯が追放されたから。
つまり、帰るべき故郷を失ったから。

作曲法(対位法)の師はハイドンで、
「ウィーン古典派音楽」に属する作曲家とされていますが、
ウィーン古典「派(シューレ)」などと呼ばれる芸術上の連帯意識はどこにもなかったのです。後世の捏造。
そもそも、ハイドンはさっさとイギリスに行ってしまっていて、作曲のレッスンなどほんの数回。

学校の音楽室に必ず掛けてあるベートーヴェンの肖像画、あれは嘘。
本当は、真っ黒な髪の、風采の上がらない小男でした。
彼が爆発的に売れたのは、1814年「ウェリントンの勝利」という曲によってであり、この曲に合うイメージのブロマイドとして、くだんの絵は生まれたのです。

彼を有名にした曲は、今では誰も振り返らない駄作。
ただ、勇ましい戦争賛美曲を求める風潮の中、この曲が異例な大ヒットとなります。
それに有頂天になるベートホーフェンの姿はあちこちに書き残されているそうですが、彼も内心では傷ついていたはず。
聴衆に届けようと心を砕いて作曲したソナタや交響曲はさっぱり人気が出ず、駄作が大人気となったのですから。
以来、彼は「聴衆に届けよう」とする姿勢、聞き手への信頼を放棄し、「書きたいものを書く」作曲法へと踏み出し、後期作品を生み出していきます。


「初期」「中期」「後期」という区分のしかた、
私、いまひとつ意味するところを解らずにいたのですが、この説明には納得でした。

曲名についての情報も、なるほど、です。
「英雄」交響曲曲のアイデアは、若き日のベートホーフェン(まだ交響曲を一つも書いていない27歳)にナポレオンの部下・ベルナドットが授けたもので、のちに「ポナパルト交響曲」として書かれたこの曲が出版される時に、出版社が時勢を読んで名前を変えた、とか、
このベルナドット、フランス執政政府から駐オーストリア大使に任ぜられ、ウィーンに乗り込んできたのときの随員の中にいたヴァイオリニスト・クロイツァーに献呈されたのが「クロイツェル・ソナタ」である、とか。

私生活での恋人の話も、根拠が続々と引用されていて、読ませます。
家族については、ベートホーフェンが自分の弟の息子をその母から無理やり引き離し、手元に引き取ってひどい目にあわせたという、甥っ子のカールが、その後軍隊で認められ、遺産も手にして、ちゃんとした人生を送ったということ、その母も息子カールの死後の80代まで長生きしたことを知って、なんだかほっとしました。
甥っ子の後見人たる権利をめぐる裁判記録とか、生々しくて驚きました。
ベートホーフェン、確かに性格的な問題を抱えていそうです。

このように、うんちく、なるほど納得、の情報に満ちた本です。
ただ、数文字下げて「根拠」のように提示されている部分が、はっきり出典を記したものだけでなく、筆者が自分で書いたように読める箇所も多々あって、面食らった、ということも付記しておきます。
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  • 掲載日:2020/07/29
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この書評へのコメント

  1. 三太郎2020-07-29 16:58

    今年は生誕250年の記念の年なのに、コロナウイルスの影響かあまり騒がれていません。演奏会ができませんものねえ。残念ですね。

  2. PIO2020-07-29 17:35

    三太郎さん
    そうなんです。当初はたくさんコンサートが予定されていたんですけれど。2020年は下半期も厳しそうですよねえ。
    コンサートに限らず、国際音楽コンクールも軒並み延期で、ほんと残念です。

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