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星落秋風五丈原
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アーシュラ・ル・グウィンの序文つき 女性作家であることが明るみに出た頃の短編集
 本中短編集は、当初女性であることを隠していたジェイムズ・ティプトリー・ジュニアの正体が明かされた頃の作品を集めている。元来性別が作品に影響することなどなく、作品はあくまで作家の個性が滲み出てくるものだ。にも拘わらず私達は無意識に女性作家には“女性”とつけ、何らかの共通点を見出したがる。それがいかに愚かな決めつけかということをアーシュラ・ル・グウィンが序文で述べている。

 男と女の役割すら、変貌可能なものかもしれない。そんな問いかけが隠されているのは「汝が半数染色体の心Your Haploid Heart」。何だかアメーバみたいな宇宙人が登場。認定官イアン・スィトロフと鉱物学者のパックス・パットンは御者座に惑星間調査団メンバーとしてやってきた。星には支配層エスザアンと被支配者フレニという二つの種族があった。主にエスザアンから接待を受けてあちこち連れまわされていたが、そのうち“女性”に出会ったことがないと気付く。実はフレニとエスザアにはある繋がりがあって…。

 理想の植民星を発見した探査船ケンタウルス号。だが、その唯一の帰還者で、異星生物を持ち帰った女性生物学者の報告が明かす恐るべき真実とは?宇宙船や乗組員自体が“ある物”をイメージしていて、これも一つの乗っ取られ型と言える性の匂いがぷんぷんしているSF「一瞬のいのちの味わいA Momentary Taste of Being」

 ヒューゴー、ネビュラ両賞受賞の栄冠に輝く「ヒューストン、ヒューストン、聞こえるか?Houston,Houston,Do You Read?」は、太陽フレアにまきこまれ、NASAとの接触を失ったサンバード号の乗務員が何と未来の宇宙船と遭遇!なぜか乗組員は女性ばかりでまさかのスペースハーレム状態?と思いきや、そんなに甘くはなかった。男性をちくちくどころかぐさぐさ刺しにくる。

 リアル研究所でもいそうな優しすぎる?研究者が主人公の「ネズミに残酷なことのできない心理学者The Psychologist Who Wouldn’t Do Awful Things to Rats」繁栄を謳歌する民の一コマかと思いきや…の「エトセトラ、エトセトラAnd So On,And So On」彼が見たのは自分の未来か、それとも単なる夢か?「煙は永遠にたちのぼってHer Smoke Rose Up Forever」恐竜時代から近未来まで、絶えず起こる生と死のせめぎあいを描く「すべてのひとふたたび生まるるを待つShe Waits for All Men Born」収録。

ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア作品
たったひとつの冴えたやりかた
あまたの星、宝冠のごとく
星ぼしの荒野から
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星落秋風五丈原
星落秋風五丈原 さん本が好き!1級(書評数:2326 件)

2005年より書評業。外国人向け情報誌の編集&翻訳、論文添削をしています。生きていく上で大切なことを教えてくれた本、懐かしい思い出と共にある本、これからも様々な本と出会えればと思います。

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