書評でつながる読書コミュニティ
  1. ページ目
詳細検索
タイトル
著者
出版社
ISBN
  • ログイン
無料会員登録

星落秋風五丈原
レビュアー:
繰り返される銃のイメージ ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア最後の短編集
1987年5月19日、ジェイムズ・ティプトリー・ジュニアことアリス・シェルドンは、寝たきりの夫を射殺した後、自分も銃で自殺を図る。享年71才。本編はその一年後に刊行された短編集である。

 自分の頭を打ちぬくなんて、それも若くもない女性がと驚くが、元CIA職員だったと聞けばその度胸も腑に落ちる。そういえば『たったひとつの冴えたやりかた』もまた、自分で自分の終わりを決めるヒロインの物語だった。

 本編「もどれ、過去へもどれBackward,Turn Backward」(小野田和子訳)も、作家ティプトリー・ジュニアの「自分(と愛する人)が自分の思う姿でなくなるくらいなら、死んでしまった方がましだ」という考え方が色濃く出ている。
 未来では、自分の生涯の中だけタイムトラベルできる。但し未来から戻る時は記憶も物も何一つ持ち帰ることができない。プロムクイーンのダイアンは、BFのジェフと話しながら55年後の未来へタイムトラベル。すると、冴えない学生だったにきび面のドンと夫婦になっていた。「こんなはずじゃあなかった!」と思いながらも、これまでの自分の“過去”を知らされるにつけ、自分の“現在”の幸福を噛みしめるダイアンだったが…。最後に銃が出てくるのも意味深だ。この頃既に彼女の念頭には死の望むべきスタイルがあったのか。「すべてこの世も天国もAll This and Heaven Two」(小野田和子訳)にも至福の瞬間を味わった後にヒロインに死が待っている。隠しているつもりでも、こんなに彼女のポリシーが作品に反映されていたとは。

「Our Resident Djinn悪魔、天国へいく」(小野田和子訳)は打って変わったコメディ。なんと神が死に、悪魔ルシフェルが弔問に訪れる。しかし悪魔には別の思惑があって…というお話。


「Second Goingアングリ降臨」小野田和子訳
「Our Resident Djinn悪魔、天国へいく」
「Morality Meat肉 」小野田和子訳

「ヤンキー・ドゥードゥルYankee Doodle」 小野田和子訳
「いっしょに生きようCome Live with Me」 伊藤典夫訳
「昨夜も今夜も、また明日の夜もLast Night and Every Night」小野田和子訳
「地球は蛇のごとくあらたにThe Earth Doth Like a Snake Renew」 小野田和子訳
「死のさなかにも生きてありIn Midst of Life」 小野田和子訳
収録。

ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア作品
たったひとつの冴えたやりかた
星ぼしの荒野から
老いたる霊長類の星への賛歌
お気に入り度:本の評価ポイント本の評価ポイント本の評価ポイント本の評価ポイント本の評価ポイント
掲載日:
外部ブログURLが設定されていません
投票する
投票するには、ログインしてください。
星落秋風五丈原
星落秋風五丈原 さん本が好き!1級(書評数:2320 件)

2005年より書評業。外国人向け情報誌の編集&翻訳、論文添削をしています。生きていく上で大切なことを教えてくれた本、懐かしい思い出と共にある本、これからも様々な本と出会えればと思います。

参考になる:27票
共感した:2票
あなたの感想は?
投票するには、ログインしてください。

この書評へのコメント

  1. No Image

    コメントするには、ログインしてください。

書評一覧を取得中。。。
  • あなた
  • この書籍の平均
  • この書評

※ログインすると、あなたとこの書評の位置関係がわかります。

『あまたの星、宝冠のごとく』のカテゴリ

フォローする

話題の書評
最新の献本
ページトップへ