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はなとゆめ+猫の本棚
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嘘なんていくらついてもへっちゃら。何にも変わらないから。
 少年少女から青春時代までを扱う4編とこの文庫のために書き下ろされた1編を含む5編の短編集。

 千原冬子(トーコ)は小学生のときからステージママに連れられ、小さな芸能プロダクションに所属して、メジャーには程遠いが、モデルの仕事をしていた。母親は時々嘘をつく。

 テレビ番組をみんなでみているとき、出演している子役を指さし、「この子と家の子は最後までオーディションで争ったの。惜しかったわ。」と。それでまわりがどっとわく。

 そんな環境に育つから、冬子も同じように事実に2割くらい水増しして嘘をついても構わないと思うようになる。それがばれても、嘘をつかれた人たちにも迷惑がかかるわけでもないし、自分も困らないからと。

 雑誌に2人の子の可愛いモデルが登場している。それをみていた友達が2人の子を可愛いと褒める。その時、冬子は言う。

 「実はその雑誌の人が家にやってきたの。一人の子が急に他の仕事があって、モデルができなくったので、私に代わりになってほしいと。」

 結構、嘘くさいはなしなのに、それで何か障害が起きたことがなく、冬子は自信をもって嘘をつくことを覚えた。

 映画で主演となることになった。しかし、映画が流れてしまったと残念がる。
売れっ子タレントの三原サトシが一般女性Aと交際と雑誌にでると、思わせぶりにAは私のことなのと言って。2割の嘘が4割、5割、そのうち殆どが嘘となる。

 しかし、彼女を憧れ、崇拝していた子のなかに、冬子の言っていることは嘘くさいと思う子がいて、彼女の言動をしつこく調査して嘘であることをつきとめる。

 可愛さあまって憎さ百倍。その調査結果を冬子にみせ、この嘘を全部マスコミにばらまいてやると脅す。
 それでも冬子は平気。冬子の位置がたいしたことのないその他大勢の部類のタレント。そんなこと暴いても、全く価値などないから。

 撮影会を終えて、数人で事務所に帰る。その途中の公園で磯山ミオが下着姿で撮影会をしている。それを何度も目にする。

 そんなある日、磯山ミオに向けて玉子が投げられる。それも次々と。怒った冬子が、みんなに向かって叫ぶ。
 「この子の父親はヤクザの親分よ!こんなことをすると、追い込みをかけられるよ!」
それで集まった人たちは引き、冬子がミオを救い出す。

 しばらくたってミオから冬子に手紙とともにメロンがお礼で届けられる。
その手紙に書いてある。
 「わたしの家は北海道でメロン農家をしています。」

 冬子の大嘘が初めて役立った瞬間だ。

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はなとゆめ+猫の本棚
はなとゆめ+猫の本棚 さん本が好き!1級(書評数:6227 件)

昔から活字中毒症。字さえあれば辞書でも見飽きないです。
年金暮らしになりましたので、毎日読書三昧です。一日2冊までを限度に読んでいます。
お金がないので、文庫、それも中古と情けない状態ですが、書評を掲載させて頂きます。よろしくお願いします。

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