書評でつながる読書コミュニティ
  1. ページ目
詳細検索
タイトル
著者
出版社
ISBN
  • ログイン
無料会員登録

休蔵さん
休蔵
レビュアー:
大規模災害の後、人々は利他的な行動をとるという。このことをアメリカ・メキシコの事例を示した本書は、多くの人々が宇宙船地球号の乗組員として共生できることを強く示してくれた。
 日本列島のみならず世界各国で災害が相次いでいる。
 被害の大きさの報道がなされる一方で災害後の暴動なんかも報じられ、場合によっては「冷静な日本人は凄い!」という一言に帰結されることがある。
 それは日本における災害後には暴動が極端に少ないということで世界から称賛され、逆に外国の場合は暴動が激化して店から商品が強奪されるという論旨だ。
 私自身、大して考えこむこともなく「そんなものか」と終わらせていた。
 しかし、その思い込みは、必ずしも当たらないということを本書により突きつけられた。
 本書はアメリカやメキシコにおける大規模災害後の市民の状況と公的機関の対応などについてまとめたものである。
 
 本書は全5章とプロローグ、エピローグから構成される。
 自然災害のみならず、ニューヨークにおける九一一の事例も取り上げる。
 本書を読むと日本は素晴らしいと報道されてきたことが、必ずしも日本独自の文化に根差したものではないと分かる。

 災害などの後、誰もが利他的となり、自身や身内だけではなく、まったくの他人に対しても思いやりを示すというのだ。
 これは実例に即して示されている。
 しかし、一般的に抱かれるイメージは異なるもの。
 それでは一般的に抱かれるイメージはいかなるものか。
 それは災害後の人々はパニック状態に陥り、退行現象が起きて野蛮になるというものという。
 そして、そのイメージのままに対応してしまうことだってあるという。
 例えば、人々が食糧を持ち合い、助け合っている現場に押し入り、悪いことを企む集会とみなし解散を強制する。
 場合によっては軍隊が動くことも。
 消火活動への自主的な協力すら妨害することもあり、結局、沈下させることができないこともあり、対してそんな命令を無視して自主的な消火活動を繰り返したほうが帰って火を消すことができた場合もあるとのこと。

 災害はいつ起きるか分からない。
 温暖化に伴うとかいう話をよく聞くが、原因はともかく、毎年各地で豪雨被害があり、大規模地震も繰り返される。
 そんな場合、人々はなんでもかんでも行政に頼るとは限らない。
 阪神淡路大震災以来、ボランティア活動は当たり前のようになり、令和2年7月豪雨の場合、越県ボランティアができないと悔しい意見すら報道で聞いた。
 共助の精神は日本にすっかり根付いたと思っていたが、それは日本特有のものではなく、人間のなかに宿る共通の気持ちなのかもしれない。  
お気に入り度:本の評価ポイント本の評価ポイント本の評価ポイント本の評価ポイント
掲載日:
外部ブログURLが設定されていません
投票する
投票するには、ログインしてください。
休蔵
休蔵 さん本が好き!1級(書評数:450 件)

 ここに参加するようになって、読書の幅が広がったように思います。
 それでも、まだ偏り気味。
 いろんな人の書評を参考に、もっと幅広い読書を楽しみたい! 

参考になる:29票
共感した:4票
あなたの感想は?
投票するには、ログインしてください。

この書評へのコメント

  1. No Image

    コメントするには、ログインしてください。

書評一覧を取得中。。。
  • あなた
  • この書籍の平均
  • この書評

※ログインすると、あなたとこの書評の位置関係がわかります。

『災害ユートピア―なぜそのとき特別な共同体が立ち上るのか』のカテゴリ

フォローする

話題の書評
最新の献本
ページトップへ