え~本日から、私が飽きるまで、文豪たちによる「官能文学祭り」を開催しようと思い立ちました。
理由は「夏だから」です。それ以上何も聞いてはいけません…。
あっという間に終わる夏は、海やお祭りではなく、本好きにとってはホラーと官能の季節なのかもしれません。(偏見)
第一冊目に選んだのは、やはりこのお方。
男がいつも、女に徹底的に翻弄される作品を多く描く文豪「谷崎潤一郎」さまです。
半世紀以上も文壇で活躍し続け、悪魔的な美と大胆なエロスを描く谷崎潤一郎……。
最近読み始めたばかりなので、詳しくはないのですが、今の所読んだ作品は全部面白すぎて、胸を高鳴らせながらページをめくっています。
『痴人の愛』のヒロインは、絶大な肉体的魅力を持つ、美少女「ナオミ」です。
エリート・サラリーマンで、高給取りの「譲治」は、自分好みの女に育て上げ、いずれ妻にするつもりで、14歳も年下の、まだ15歳であったナオミを引き取るところから、この物語は始まります。
この設定で、正直私はドン引きし、「なんて気持ちの悪いおじさまなのだろう…」と思いましたが「まぁ…お話だし。私も疲れた時、福士蒼汰君の画像検索して見てるし、似たようなもんか」と思いな直し、先を読み始めました。
一緒に暮らし始めた始めこそ、まじめに勉強し、生活していたナオミですが、ナオミが成熟し、妖艶さを増すにつれて、彼女の態度は変わり始めます。
彼女は知性がないので、基本タメ口です。ついでに、男を見れば誰とでも寝てしまいます。それでも「私は浮気なんかしてないわ!信じて(ウルウル)」みたいな目をすることは忘れません。
浪費家なので、男の貯金はすぐに底をつく。
家事能力もないので、食事は外食か高級デリバリー。
しかも、自分の下着すら片付けられない女です。
ですが、ナオミのまるで西洋人のような外見と、肉体的魅力はとびきりで、エリート・サラリーマンであった譲治は、その魅力にあらがえず、どこまでも堕ち続け、人生を翻弄されます。
あまりにひどい有様に、一度は彼女を追い出すものの、すぐに寂しくなり「何でもするからそばにいて!」と言い出す始末……。
譲治は「理想の妻」にナオミを育て上げようとしたものの、見事に失敗し、逆に彼女に奴隷のごとく調教されてしまうのですね……。
しかも「これを読んで、馬鹿馬鹿しいと思う人は笑って下さい。(一部省略)私自身は、ナオミに惚れているのですから、どう思われても仕方がありません。」
と、ラストに達観した目線で読者に告げているのですから、もうこれは完全に悪女ナオミ様の一人勝ち、としか言い様がありません…。
男は「こいつは悪女だ!」と思っても、その魅力に中々あらがえないものなのでしょうか……。
まあ、元々「自分好みの女に育て上げよう」と実行したのは譲治で、ナオミはまさにその通りに、大人になっただけなような気もするのですが。
ですが、恋愛というのはそういうものですよね……。
女もそうです。惚れた方が、完全に負け。
「こいつ、どこがいいねん?」と周りから言われても、男がどんなにワガママで理不尽なことを言ってきても、何とかしよう! と思ってしまうことって、あるような気がします。
妖艶なナオミお嬢様と、悲しい性を持つ譲治おじさまの恋物語。
「私もナオミになりたいわ~」という虚しいつぶやきと共に、私は本を閉じたのでした。
かなり、面白かったです。
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