御厨名誉教授の書評には,「意地悪や嫉妬心もリズミカルに」とのタイトルが付いていました。そもそもこの本は,実在した塙保己一の生涯を描いたものです。江戸時代の国文学者ですが,幼少の頃に失明してしまいます。盲目となりますが,通常盲目の人が付く仕事ではなく類まれなる才能を生かして国文学者になります。紆余曲折,その姿を描いたものです。「見えるか保己一」というタイトルからもわかるように彼には盲目だからこそ見えるものがあります。人の心ですね。
実力を評価され,出世して弟子を持つとともに妻帯し,子を持つことにもなります。ただ,妻とは別れることになります。妻は金に目がくらんだように描かれています。後添えを持つことになり,それなりに幸せには暮らしますが,やはり彼には盲目だからこそ見えるものがあったのでしょう。書物や学問が第一との思いは抜けきらない中,人の裏切りや感情に惑わされながらも生きていく姿が何とも言えません。
見えるかというタイトルは,奥が深いです。「見えるか」と言っているのは何のことなのか,最後まで読んで,「そういうことかな」とおぼろげながらわかったようなわからないような気にさせられました。
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