『スマホを捨てよ、町へ出よう』
現代人にとって、スマートフォンは生活必需品となり、その携帯性から時間があれば画面を覗いて何かを見ている。本書は、そういった生活から距離を取ってショートトリップに出かけようという趣旨である。なにも考えず「ぼーっとすること」をめざして。
思えば、私自身も常に何かを考えている。ぼーっとしたことはほとんどないんじゃないかと思う。頭が空っぽになったのはいつの頃だったか・・・。
morimoriさんのレビューを読んで、中島さんのぼーっとする旅の記に興味を持ち手にした。読んでみると、中島さんご本人はぼーっとすることなく、旅先での出来事を事細かくレポートされている(まぁ、ぼーっとするだけでは本は書けないよね)。「ほんとにぼーっとしてるのwww」とツッコミを入れながらも楽しく読むことが出来た。
行ってみたいなと思ったのは「小石川植物園」様々な植物たちと、東京大学の趣深い研究施設が共存する東京一ぼーっと出来る場所である。椿、梅、桜、躑躅、花菖蒲、紫陽花、木槿、金木犀と季節ごとに花が咲き、オオシマコバンノキといった珍しい植物にも出会える。花が咲く都度、訪れたら様々な顔を見せてくれるのだろうな。大阪に住んでいる身としては羨ましくて仕方がない。
『なにしろ約四千種類が、めぐる季節とともに姿を変える。こればっかりは、わたしごときの筆で何を書いても追いつかない。すべての植物に名前がついている。だって、植物園だから。(中略)木々や葉や花々はいつもそこにいて、生命の営みを粛々と繰り返して、その美しい姿を見せてくれている。』
いつ行っても、全然おなじではない、その生命の営みを深呼吸しながらぼーっと眺めていたい。
予期せぬ発見も旅の魅力の一つだ。不運にも雨の日に訪れることとなった池上梅園。不運と思われた雨が梅の本当の美しさを見せてくれた。
『そして、私は知ったのだった。雨の中の梅の花がいかに美しいか。濡れた梅の木の幹と枝が黒く光って、濃淡ちりばめられた花弁の色合いをどんなに魅惑的に際立たせるか。』
なんという贅沢!と中島さん。雨の旅も悪くないな。
あと何年かしたらサラリーマン生活も卒業だ。仕事をしなくなったらぼーっと旅する心の贅沢を味わえるかな。
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