宇宙と青春ものは相性が良い?先日ひさびさの月9「サバ缶、宇宙へ行く」初回を見た。若狭湾に面した土地にある水産高校を舞台にしたお話。ドラマスタート直前に先のようなタイトルの記事があった。「この夏の星を見る」「宙わたる教室」「いつか、無重力の空で」といった、原作を読みドラマ・映画を観た作品が並んでいた。
経験的には化学と青春、生物学と青春、もありそうな気がする。
雨が好きで、空を飽かず眺めていた少女・勝子の憧れはマリー・キュリー。高等女学校の頃には縁談の話も出始める時代、帝国女子理学専門学校の物理学科に進学し、実習生として派遣された気象台で生涯の師・三宅と出遭い、研究者として成長していく。戦後、最新の微量拡散分析法を開発していた勝子のもとにビキニ環礁近くで被曝した第五福竜丸に降った「死の灰」が持ち込まれ、微量分析を依頼されるー。
戦前・戦中から戦後。東西冷戦下、超大国の間で原水爆実験が盛んになり、深刻な放射能汚染が心配された時代は、政治的な思想闘争がベッタリと露骨に貼り付いた時代でもあった。そして女性の社会進出、女性科学者の増加のための運動か熱を帯びた頃でもあった。
勝子は物理学科に属しながら実験・分析のための化学の必要性を痛感し独学で身につける。大気中、海洋中の放射性物質の検出で実績を認められて、博士号を取得、さまざまな女性のための活動をも展開する。実験の手法がわかってきたころから、ラボで容赦ない意見を言うことから「気性の勝子」「勝ち気の勝子」とのあだ名がつくー。
科学作家のトップランナーとも言える伊与原新により科学実験の内容が詳細に描かれる。そして何より、この理系女子の心のうちを上手に描き出していると思う。納得感がある。時代と悲劇とにいやおうなく向き合わされ、それでも実直に実験・分析を進めていく勝子。その心情をつぶさに描いていく。
クライマックスは放射性物質の検出をめぐる日米の科学者対決。アメリカは原水爆実験に不利なデータは認めたくない。両国で分析の相互検定を行いたいという主張が認められ、勝子は単身、競争相手のいるアメリカの研究所へ単身乗り込んでいく。
相互検定の勝負の最中、勝子の理解者で当地のアメリカ人夫妻がお月見パーティーを開いてくれたところから、2回めの勝負にあたっての心構えを作るところまでのくだりが素晴らしい。
折しも有人宇宙船・アルテミスⅡが月を周回して帰ってきたところ。また勝負前の後半は、言い回しが、どこか、女性になり切って書くのが得意な太宰治か、はたまた少々がらっぱちな言葉を混ぜて雰囲気をつくる幸田文にも似ているような気がした。
やばい感動した!と強く感じて、そのまま終わった。クライマックスからラストまで早くキレがよい。だから、読後感も良い。伊与原新は科学の知識だけではなく文系流の盛り上げ方も上手だな、と関心。
科学と青春、十分良い取り合わせだなと。これからもどんどん読みたいです。
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