先に言うと、内容に唸らなかったわけではありません
(- -@)。なにを出したいのか、という目的に対しての工夫がキレすぎてて怖いくらい。
キム・ジヨンは商才のある母親中心の家庭で育った。幼少の頃から弟と自分に関する差、にもやもやしたものを感じていた。
やがて大学在学中の就職活動で書類選考に落ち続けた上、やっと参加できた企業の面接でセクハラの状況でどう対処するか、という質問をされる。なんとか広告代理店に入り、しっかりした女性課長と良い同僚に恵まれたが、時折り社内外で女性軽視の発言をされたりする。やがて優しくそこそこ収入の高い男性との結婚。子供を作るにあたっても、妊娠してからも、違和感を覚えたり、無神経だと感じる言葉に遭う。
泣く泣く会社を辞めて子育て中の散歩の公園で近くにいたサラリーマンが「ママ虫」と自分の妻の悪口を言うのを聞いて傷つくー。やがてキム・ジヨンには奇妙な症状が見られるようになるー。
まずもって設定が、裕福寄りな家庭、大学出、企業への就職という、よくある、ありすぎるものであること。もちろんさまざまな人がいる中で、よくありすぎる道のり、その途上で、女性ならではの生きづらさやそもそもの疑問を強く感じている。だからなのか、挙げられている事件、体験がとてもリアルだ。
男性の名前、キム・ジヨンのビジュアルの描写、そしてこの主人公の名前・・散らしてある仕掛けもシブくてキレがあるような・・
まず感じるのは、時代ということ。家父長的な社会の意識や女性を下に見たり家族のための犠牲を強いるのは親の代までまさに常識だった。田舎から1人、嫁に入ったのが私の母で、救えなかった、という感覚もまだある。
世代は変わっても、制度に意識が追いつかなかった時期がしばらくあった。この本の叫びに、時代に乗っていたのも確かで、家庭内のことも胸が痛い部分はあるなと省みる。最近はまさにこの本で挙げられているようなことが問題となるようになって、少しずつ変わってきた気も、しないでもない。職場には男性が圧倒的に多かったが、今や女性上司は普通にいて違和感はまったくない。
さまざま韓国のことも知った。男児を異常に欲しがる風習、また兵役のある男性からは強い羨望と蔑みの目線があること。託児所無料にはえっ進んでる、などと。そういえばシンガポールでは女性の働き手を失わないよう、各地に公営の保育所があったっけと思い出した。
バブル崩壊初期まで売り手市場であった中、大学の後輩女性が就職先がなく、コネで銀行に入れてもらった、と話していたな、と、就職活動のエピソードを読みながら思い返していた。
たんたんとしたルポルタージュふう、というのも好ましい。国際的には♯Me too運動が国際的に燃え広がった時期と相俟って、発売されるやベストセラーとなったという。
なるほど、読むと分かる。戦略的に計算されている。ふむふむ。
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