日本翻訳大賞の選考委員の岸本佐知子さんの訳書。
岸本さんはエッセイ集『ねにもつタイプ』は読んだものの、遅読の僕は訳書は本書が初めてかと思ったが、かろうじてショーン・タン『セミ』だけは読んだことがあった。
これは面白い!
小国〈内ホーナー国〉が、隣の大国〈外ホーナー国〉に侵略されるお話。
二十世紀に引き続き「戦争の世紀」となった二十一世紀では、いたるところで際限もなく繰り返されているお話ではある。
作者のソーンダーズは、二〇〇五年に四冊目の著作として本書を発表した。
当時のアメリカは「ブッシュ・ジュニア」大統領の時代で、同時多発テロからイラク戦争へという頃である。/
【国が小さい、というのはよくある話だが、〈内ホーナー国〉の小ささときたら、国民が一度に一人しか入れなくて、残りの六人は〈内ホーナー国〉を取り囲んでいる〈外ホーナー国〉の領土内に小さくなって立ち、自分の国に住む順番を待っていなければならないほどだった。】(本書。以下同じ。)/
やむを得ず隣国の〈外ホーナー国〉にはみ出してしまう、そんな内ホーナー人を外ホーナー人たちは苦々しい思いで見ていた。/
【「さて、では採決しよう」とフィルが言った。「祖国のため、これ以上の暴力行為を防ぐために、われわれはこの侵略者を解体するのか、しないのか?」】/
【ああでも、とフィルは思った。なんかいま調子が悪い気がする。いまはよく考えるのことがひどくできない。あのいまいまし脳はどこイた?どこに置いテきたですか?長いことお出かけになりやがっているよ脳は。これではスバラシ名案が浮かばれないのも無理もない。俺はあの変てこなぐるぐる歩き侵略者どもに言てやりたイのだ、貴様らなんかに俺たちの気持ちがわかられますか、あのヒトデナシ人どもと隣り合わせて生きるねばならない気持ちが、あのやくざヒトデナシ連中は自分らをヒトと思い上がり、俺たちの素敵大きい土地広いをみだらに欲しがり、俺たちが広い大きい先祖土地すばらしいに住んでいるからといって憎々しい目でこっちを見る。それのこと話たい。なのに急にいま口が素敵にしゃべれない。】/
ソーンダーズと岸本さんのコラボによる名調子に酔い痴れる。/
ソナケデ、僕もドモシテモ イトコト言テやられたくナタ。
アメリカ人さんエ、
(外国人宣教師のイントネーションで)
「オウヲ シンジマスカ?」
また、〈入管〉のオマワリさんエ、
(東京オリンピックの時の〈オ・モ・テ・ナ・シ〉のリズムで)
「ヒ・ト・デ・ナ・シ!」/
ソーンダーズと岸本さんの訳書がガゼン読みたくなってきた。
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