4つのミステリが入った短編集。短編集は表題になっている話がいちばんできが良い確率が高いが、本書もその例にもれずでしょうかね。
1つ目の表題作は透明人間が殺人事件を起こしたらどうなるか。
これ、誰でも一度は考えたことがあるんじゃないかなあ。「透明なんだから誰にも気づかれず、完全犯罪としてたやすく目的を果たせるよね」と。私もこれを読むまでそう思っていたけれど、なるほど、なるほど、透明人間だからこその苦労(?!)があるわけで、そこを一つ一つ取り上げてくれたロジックと説得力は脱帽しました。
2つ目のオタクが裁判員になったら裁判の行方はいかにという話。
私はここまでのオタク愛を持ち合わせたいないので途中まではこれをどう読めばいいのかわからなかったんですが、あ、そうか、これは馬鹿馬鹿しいほどはっちゃけた世界観を楽しめばいいんだとわかった瞬間から楽しめました。それゆえか、最後の落ちは想像できちゃいましたが。
3つ目は異常に耳がいい探偵さんのお話。これはあまり印象にのこっていないなあ。
と、まあ、ここまでなら★4つなんですが、うーん、私的には最後の4つ目の話が気に入らず。船上での脱出ゲームの話で、細かいところはものすごくよくできています。細かいところはすばらしいのに、大枠がなあ。
319ページでいきなり出てくる「益田さん」って、だれなのよ?
しかも、これ、傍点まで打ってるんですよねえ。
傍点があるからにはぜったいにこの一言がどんでん返しの一環になっているんだろうけど、読み返してみてもそれらしき人物がわからない。読んでもわからない。調べてみてもわからない。気持ちが悪いまま、マジで朝日がのぼっちゃいました。
これ、分かった方いたらぜひ教えていただきたいです。
でもね、私は思うんですよ。
傍点まで振った一言なのに、それがぜんぜんぴんと来ない。この時点でミステリとしては大きな減点じゃないかと。たとえるなら、20世紀少年で「ともだちの正体はふくべえ」と言われて、「え?だれ、それ?」って感じでしょうかね。
こういう場面で傍点まで振ったなら、「十角館」のページをめくった瞬間に訪れた「ヴァン・ダインです」ぐらいの破壊力がないとだめでしょう。この一点ゆえにこの本の評価はだだ下がってしまいました。
====テータベース====
怒濤の展開に飲み込まれる快感に身を委ねる悦楽!
2020年のミステリ・ランキングを席巻、
「本格ミステリ・ベスト10」第1位
「このミステリーがすごい!」第2位
「週刊文春ミステリーベスト10」第2位
「ミステリが読みたい!」第3位
【内容紹介】
透明人間が事件を起こしたら?
アイドルオタクが裁判員裁判に直面したら?
犯行現場の音を細かく聞いてみたら?
ミステリイベント中のクルーズ船で参加者の拉致監禁事件が起こったら?
阿津川辰海の傑作短編集がついに文庫化。
波に乗る著者が放つ高密度の本格ミステリ!読めばファン確定。驚嘆必至、必読の一冊!


- 掲載日:2026/05/20
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