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わたしたちに実現できるのでしょうか?
著者は、データと人工知能の倫理に関するベイリー・ギフォード寄付講座の教授で、専門は徳倫理学 (virtue ethics) です。わたしは、徳倫理学という学問を初めて知りました。どうも、哲学科内に置かれた講座のようです。ただ、学問の名称を知らずとも理解できるよう、著者は、わかりやすく説明しています。そして、著者の訴えは明白です。
わたしたちはいま、AI の利用方法を変えるよう働きかけるべきだと、訴えているのです。タイトルにあるとおり、AI はわたしたちの過去を映しだす鏡です。残念ながら、性別や人種にもとづく差別は、わたしたちの世界に根強く残っています。そのため、『アメリカでは黒人患者は全般的に医師から十分な医療を受けられておらず、同等の症状や臨床所見の白人患者ならすぐに受けられるような、より費用のかかる検査や治療へのアクセスが断たれてしまって』いるそうです。日本とは保険制度が違うため、個人が加入する健康保険が勤務先や収入によって、受けられる医療にかなり差異が発生する仕組みのようです。
そんな偏りのあるデータがもとになっている AI が治療の優先順位を決めるようなことがあってはならないというわけです。たとえ、命にかかわる医療ではなくとも問題は起こります。住宅なども一例です。入居審査や住宅ローン審査を AI で自動化した場合、そのプロセスはブラックボックスとなり、審査を通らなかった理由が明らかになることもなく、ふるいにかけられてしまいます。
著者は、『AI が単により速くより安く決定を下せて、それが欠陥のある人間が論理的に考えたうえで出した決定と同じくらい信用できるのなら、効率の論理に引っ張られて私たちは理由づけの部分をプロセスから外してしまう』と、危惧しています。つまり、人間も AI 同様完璧ではないのだから、AI にさせたほうがいいとなれば、わたしたちは何が道徳的に正しいか、考えるのをやめてしまうのではないかというのです。
おそらく著者は正しいのでしょう。そして、著者の主張するとおり、『道徳的な考察を共有する、集団として道徳的な訴えをしていく、連帯して責任を割り当てていく、自分たちの未来について道徳的な想像力を働かせる、こうした力が危うくなっている』のだと思います。
難しいのは、著者は AI を使うなと言っているわけではありません。わたしたちは単に AI に NO を突きつければいいわけではなく、AI の使い方を変えるべきだと主張しています。わたしたちが見過ごすような事実を分析する力などは利用して、地球温暖化など喫緊の問題を解決すべきだと訴えています。この時代に生きる者の責務と言われればそれまでですが、正しい用途を見極めるのは、なかなかハードルが高そうです。それを実現できる人材がどれだけいるのか心許ない気がします。
わたしたちはいま、AI の利用方法を変えるよう働きかけるべきだと、訴えているのです。タイトルにあるとおり、AI はわたしたちの過去を映しだす鏡です。残念ながら、性別や人種にもとづく差別は、わたしたちの世界に根強く残っています。そのため、『アメリカでは黒人患者は全般的に医師から十分な医療を受けられておらず、同等の症状や臨床所見の白人患者ならすぐに受けられるような、より費用のかかる検査や治療へのアクセスが断たれてしまって』いるそうです。日本とは保険制度が違うため、個人が加入する健康保険が勤務先や収入によって、受けられる医療にかなり差異が発生する仕組みのようです。
そんな偏りのあるデータがもとになっている AI が治療の優先順位を決めるようなことがあってはならないというわけです。たとえ、命にかかわる医療ではなくとも問題は起こります。住宅なども一例です。入居審査や住宅ローン審査を AI で自動化した場合、そのプロセスはブラックボックスとなり、審査を通らなかった理由が明らかになることもなく、ふるいにかけられてしまいます。
著者は、『AI が単により速くより安く決定を下せて、それが欠陥のある人間が論理的に考えたうえで出した決定と同じくらい信用できるのなら、効率の論理に引っ張られて私たちは理由づけの部分をプロセスから外してしまう』と、危惧しています。つまり、人間も AI 同様完璧ではないのだから、AI にさせたほうがいいとなれば、わたしたちは何が道徳的に正しいか、考えるのをやめてしまうのではないかというのです。
おそらく著者は正しいのでしょう。そして、著者の主張するとおり、『道徳的な考察を共有する、集団として道徳的な訴えをしていく、連帯して責任を割り当てていく、自分たちの未来について道徳的な想像力を働かせる、こうした力が危うくなっている』のだと思います。
難しいのは、著者は AI を使うなと言っているわけではありません。わたしたちは単に AI に NO を突きつければいいわけではなく、AI の使い方を変えるべきだと主張しています。わたしたちが見過ごすような事実を分析する力などは利用して、地球温暖化など喫緊の問題を解決すべきだと訴えています。この時代に生きる者の責務と言われればそれまでですが、正しい用途を見極めるのは、なかなかハードルが高そうです。それを実現できる人材がどれだけいるのか心許ない気がします。
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ミステリやサスペンスなどのエンタテイメント作品が好きです。好きになったきっかけは、パーネル・ホール氏のスタンリー・ヘイスティングズ・シリーズ。探偵とは名ばかりのドジなスタンリーが毎度まいど悪戦苦闘。自分自身のトホホな日々の暮らしとスタンリーのドジっぷりを比べつつ読んでいました。
次作はまだかな、そう思えるシリーズがわたしのなかでまた増えることを期待しつつマイペースで読んでます。
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- 出版社:東京化学同人
- ページ数:0
- ISBN:9784807920846
- 発売日:2026年04月23日
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