マーティン・ガードナー(1914~2010)は、アメリカのコラムニストで、数学やパズル、マジックなどに造詣が深く、大変楽しい数学コラムを沢山残した方でした。
本書は、そのガードナーの著作を集めた『完全版 マーティン・ガードナー数学ゲーム全集』の第1巻です。
この全集、全15巻の予定だということなので、是非とも全巻刊行していただきたいものです。
収められているパズル類は、いずれも数学に関係したもので、幾何学あり、トポロジーあり、論理学ありで、ヴァラエティに富んでいます。
しかも、比較的取っつきやすい問題ばかりで、例えば数式がずらずら出てきて見ただけでやる気が失せるような問題は一つもありません。
本書では、最初にそのパズルが出された時の記述に加え、その後の改訂も収録されています。
ですから、ガードナーが出した問題に対して読者からリアクションがあり、その中の秀逸な物も紹介してくれたりしています。
そんな例を一つあげましょう(若干表現を変えています)。
非常に有名な問題なので、みなさんもどこかで見たことがあるかもしれません。
ある土地には嘘しかつかない人ばかりが住んでいる嘘つき村と、正直なことしか言わない人ばかりが住んでいる正直村がありました。
ある旅人がこの土地を歩いていて道に迷ってしまいました。
二手に分かれた道の所に一人の男性が立っています。
嘘つき村の住人なのか正直村の住人なのかは分かりません。
旅人は湖に行きたいので、どちらの道が湖に行く道かを尋ねようと思いますが、質問できる回数は1回だけに制限されています。
さて、どのような質問をすれば正しい道が分かるでしょうか?
この問題の答はそれぞれお考えいただくとして、読者から、ガードナーが示した答えに対してコメントがついています。
このコメントが秀逸で、要は「嘘ばかりつく」、「正直なことしか言わない」というのはどういう意味なのかを考察しているのですね。
ガードナーの示した答えは一つの解答ではあるのですが、それが解答になるということは、旅人はその方法で正しい道が分かってしまうわけです。
ですが、本当に嘘しか言わない人ならそんな答が分かってしまうような答え方はしないのではないか?というのが読者コメントの趣旨の中核なのですね。
これ、実は私も疑問に感じていた点なんですよね(例えば、本当に嘘をついて騙したいと考えている人なら、正しい道を知っていても「知らない」と嘘をついてしまえば旅人には正しい道は分かりません)。
我が意を得たり!という感じでした。
また、ちょっと面白いパラドックスもあります。
これも有名な問題なのでご存知の方も多いでしょう。
9部屋しかないホテルに10人の客が訪れました。
客は、みんな相部屋は嫌だと言います。
困ってしまった支配人は、しばらく考えた後名案を思いつきました。
まず、1人目と2人目の客を1号室で待たせておきます。
3人目を2号室に、4人目を3号室に、5人目を4号室に、6人目を5号室に、7人目を6号室に、8人目を7号室に、9人目を8号室に案内します。
そして1号室に戻り、2人目の客を9号室に入れればできあがり。
はい、10人の客を9つの部屋に入れられたでしょ?
もちろん、パラドックスですから、どこか間違っているのですが、どこが間違っているのでしょうか?
こういう楽しい問題が満載なのですが、私はこの本を読んで、子供の頃に読んだ多湖輝さんの『頭の体操』を思い出しました。
『頭の体操』も夢中になって読んだので、その内容はかなりはっきり記憶に残っているのですが、『頭の体操』にはガードナーの問題が随分多く収録されているのですね。
本書にも、『頭の体操』に載っていた問題が何問も載っています。
著作権は大丈夫だったのでしょうかねぇ?
いずれにしても、全15巻、無事に刊行されますように。
ちゃんと全巻おつき合いしますから。
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