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たけぞう
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二十世紀最悪の虐殺。
先行書評で知り、ずっと読んでみたかった作品です。
二段組491ページという分厚い本なので手を出しにくかったのですが、
どうにかゴールできました。
文章が読みやすくて頭に入ってくる一方で、
自分の頭の中のアフリカのイメージとずれるところがあり、
先入観を取り除く必要がありました。そういう面でも刺激的な一冊です。

半分のぼった黄色い太陽。ナイジェリアでおきた分離独立により、
たった三年だけ存在したビアフラ国の国旗です。
ビアフラを承認したのが数か国だったので、
クーデターとかビアフラ戦争みたいな内戦的な取り上げられかたもします。

この作品を読んで、人間の尊厳とは何かを強く感じました。
第二次世界大戦の負け戦の日本も、似たような精神状態だったのではという
気がしてきます。
しかし、ビアフラの残酷さは群を抜いています。
戦争というのは、本来は戦闘員同士の戦いです。
しかしビアフラで起きたのはただの虐殺です。
何百万人という人が殺されましたが、大半は武器を持たない市民だし、
戦闘員もまともな武器をほとんど持たない民兵状態で、
とても戦争とは言えたものではなさそうです。

そこまでしてビアフラ独立に走らせた原動力はなんだったのか。
中心となったイボ族は、南部で最大の民族で、クリスチャンです。
イスラム教徒の北部の民族や、西武の別の民族が
宗主国のイギリスに取り入って政治を牛耳り、
イボ族は教養と経済面でのし上がっています。
ナイジェリアは、そんな微妙なバランスの上で揺れていたのです。

ナイジェリアがイギリスから独立を果たしたあたりからが、
この物語の舞台です。ある時、政治の腐敗にたまりかねたイボ族が、
反乱を起こして独立に突っ走ったのです。
しかし戦争に何の備えもないいきあたりばったりの行為が、
二十世紀最大の虐殺と飢餓という人権侵害を招いたのです。

イボ族の学者のオデニボ、上流階級で恋人になるオランナ、
二人に遣えるハウスボーイのウグウを中心に物語は進みます。
大恋愛の話でもあるし、人間の尊厳との戦いの話でもあるし、
激しい浮き沈みの話でもあります。

自分の持っていたアフリカのイメージががらりと変わりました。
なぜ人間はここまっで残虐になれるのかという、人間性を疑うような
事態が頻発しつつも、第二次大戦も似たような部分があったことに気づき、
極限状態に置かれた人間の取る行動のすさまじさを知ったのでした。

この物語の登場人物たちは、自分の感覚よりも暴力的な強引さがあり、
価値観があらゆるところで違うことがよく分かりました。
でも、見かたを変えると情熱的と言える部分もあるので、
海外文学の魅力に触れる感覚があります。

文章全体が穏やかなだけに、内容の異常さとあいまって
すごいことになっています。ノーベル文学賞を取るのは、
きっとこんな作家さんなんだろうなと思ったのです。
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たけぞう
たけぞう さん本が好き!免許皆伝(書評数:1471 件)

ふとしたことで始めた書評書き。読んだ感覚が違うことを知るのは、とても大事だと思うようになりました。本が好き! の場と、参加している皆さんのおかげです。
星の数は自分のお気に入り度で、趣味や主観に基づいています。たとえ自分の趣味に合わなくても、作品の特徴を書評で分かるようにしようと務めています。星が低くても作品がつまらないという意味ではありません。

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